予算管理に取り組もう/予算に照らして実績を分析 

予算管理とは、経営目標を達成するために、策定した予算と実績を比較して適宜修正を加えること。経営管理の中でも特に重要な存在です。

 

「予算策定が難しい…」「実績との差異が生じても対処法が分からない…」という方もいるのではないでしょうか?

 

そこで、今回は予算管理に取り組むために必要な手順やポイントを基礎から解説します。

 

1.予算管理とは

予算管理とは、予算を作成し、その計画が予定通りに進行しているかをモニタリングすること。具体的には、月ごとに策定した予算と実績を比較して達成度合いを把握・分析し、問題点を明確にして改善策を講じる、この一連の活動を指します。

 

<予算管理の目的>

 

・計画通りの業績を達成するため

・計画通りの数字が出ない原因や修正点を短期間で把握するため

 

予算管理は売上目標を決めたり、実績を確認したりすることが最終的なゴールではありません。本来の目的は、立てた目標を達成することです。そのため、計画通りの数字が出ていない場合には、その原因や修正すべき点を把握する必要があります。

 

計画通りに行かない時に役立つのが、予算と実績の差異です。計画と結果を数値化して比較することで、問題点が短時間で把握できます。修正が必要な部分を見つけるまでに時間がかかると損失が大きくなりますが、最短時間で発見できれば最小限に抑えられます。

 

2.予算管理の手順

次は、予算管理の手順をPDCAサイクルに照らし合わせて説明します。ステップ1から順にステップ4まで進んだ後にステップ1に戻り、PDCAを繰り返す形で行います。

 

ステップ1(Plan):予算を策定する

予算管理の最初のステップは、対象ごとに予算を策定すること。「売上予算」「原価予算」「販売費及び一般管理費の予算(販管費予算)」「利益予算」に分類して予算を作成します。

 

売上予算 ・売上目標

過去の実績を参考にして決める

原価予算 ・製造やサービス提供で必要になる費用

商品仕入れ費用、原材料費の見積もりなど

販管費予算 ・活動するために必要な費用

家賃、光熱費、人件費、広告費など

利益予算 ・売上から原価と販管費を引いた利益

売上を増やすor原価と販管費を減らせば目標達成できる

 

予算策定の流れは、製品やサービスの部門ごとに「売上予算」「原価予算」「販管費予算」「利益予算」をそれぞれ決めて、それらを全社でまとめて微調整します。

 

ステップ2(Do):事業の遂行

予算を策定した後は、事業を運営します。大事なポイントは、予算で計上されている案件が、計上されている時期に発生しているかどうか確認しながら進めること。必要があれば、月間の予算を週割り計算して大幅にズレていないか確かめましょう。

 

ステップ3(Check):予算のチェック

一般的には1ヶ月単位で予算と実績の差異を確定します。差異が生じた場合には、放置せずに原因を突き止めることが重要です。

 

売上、原価、販管費、利益の差異を検証する方法以外に、新規顧客売上高の差異など「自社独自のフレームワークを用いる方法」もあります。

 

それぞれのデータをグラフ化・色分けして見やすい状態に整えましょう。徹底的に分析すれば、差異が生じた原因が見えてきます。

 

差異が5%以内なら改善はさほど難しくないはずです。しかし、10%を超える差異が見られたら、予算計画が不適切だった可能性が出てきます。

 

また、簡単に目標達成した場合には、設定値が低すぎる可能性があります。伸び率が良い時は、上方修正してより高い目標設定にすることも検討しましょう。

 

ステップ4(Action):通期予算達成に向けた改善・業績予想の修正実施

予算と実績の差異を分析したら、予算達成に向けて改善策を講じます。原因には内的要因と外的要因があるので、分けて考えると修正案を見つけやすいです。また、両方の要因が原因になっていることもあるため問題点の見落としに注意してください。

 

内的要因:営業成績が悪いなど、組織や業務の仕方に問題がある

外的要因:社会情勢や景気など、取り巻く環境に問題がある

 

内的要因は改善しやすい傾向があり、外的要因は努力ではどうにもならないことがよくあります。やむを得ない事情がある場合には、予算自体を修正しましょう。

 

3.予算管理のポイント

予算管理のポイントは3点です。

・無理な予算を組まない

・効率的に管理できるシステムやアプリを活用する

・少なくとも1ヶ月単位で差異分析を実施して軌道修正する

 

無理な予算を組まない

予算管理の大原則は、無理な予算(特に営業・売上)を組まないこと。「どこにどれくらいの人員を配置して、いくら売上を上げる予定なのか?」といった計画が間違っていたら、経営に悪影響を及ぼすからです。

 

経営管理の拠り所になる予算管理が不適切だと業績を伸ばすのは難しいでしょう。予算と実績がかけ離れている状態が続けば、経営が立ち行かなくなる恐れがあります。実現不可能な計画を立てていないか見極めることが大切です。

 

効率的に管理できるシステムやアプリを活用する

予算管理は部門ごとの予算策定や定期的な見直しなどで手間と時間がかかります。そのため、入力・修正作業が楽になるシステムやアプリを活用して効率化しましょう。

 

データ集計や分析ができるシステム・アプリを活用すれば、問題点を見つけやすくなります。それに、他の社内ツールと連携して入力作業を自動化し、入力ミスを減らすことも可能です。

 

少なくとも1ヶ月単位で差異分析を実施して軌道修正する

予算管理のサイクルは遅くとも1ヶ月単位です。最終的には年次で判断するとはいえ、適切なタイミングで修正するためには短いスパンで取り組む必要があるからです。月次で予算と実績の差異を分析し軌道修正しましょう。

 

4.まとめ

予算管理は経営の要であり、会社の問題点を明確にするために欠かせない存在です。業績を伸ばすための重要ポイントは、予算管理の目的を間違えないことです。

 

予算編成や実績との差異確認が目的なのではなく、目標を達成するため、問題点や修正点を短時間で把握するために予算管理を行います。定期的に進捗状況をチェックして、早めに軌道修正するよう心がけましょう。

 

執筆者:宮林 有紀(みやばやし ゆうき)

医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。