大阪府では、資金調達を必要としている中小企業者を対象に、「大阪府中小企業制度融資」を実施しています。
この制度融資にはさまざまな種類の融資メニューがあり、事前に内容をよく調べることが、スムーズに制度を利用するためのポイントになるでしょう。しかし、融資メニューは種類が多くあるため、どれに申し込んだら良いかわからないなど、申請前に悩むことも少なくありません。
そこで本記事では、大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)について、融資対象や主な融資メニューなど、事前に知っておくべきことについて説明します。
1. 大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)とは
大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)とは、大阪府が大阪信用保証協会と連携して実施している制度です。大阪信用保証協会が公的な保証人となり、中小企業者が融資を受けられやすい状況をつくるというのが、制度の狙いです。融資にあたり、大阪府では融資対象の条件や必要書類について、次のように規定しています。
(1) 融資対象
大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)の融資対象となるのは、
①中小企業者
②小規模企業者
③協同組合等
で、いずれも大阪府内に事務所を構えていることが条件です。さらに、各融資対象者は、以下のように定義されています。
①中小企業者(法人または個人事業主)
・引用:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/246/00000000/1annai%20.pdf
②小規模企業者(法人または個人事業主)
・引用:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/246/00000000/1annai%20.pdf
③協同組合等
「協同組合等」に該当する主な組合は、「商工組合」「商店街振興組合」「生活衛生同業組合」「協業組合」「中小企業等協同組合」です。
大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)の融資対象者には、「特定非営利活動法人」も含まれます。その場合、常時雇用の従業員が300人以下(卸・サービス業は100人以下)の法人は「中小企業者」、常時雇用の従業員が20人以下(商業またはサービス業は5人以下)の法人は「小規模事業者」に分類されます。
また、大阪府が定めている「融資対象業種」であることも、融資対象者の条件に入ります。具体的な融資対象業種については、以下のページで確認できます。
・参考:融資対象業種(大阪府)
http://www.pref.osaka.lg.jp/kinyushien/seido001/gyousyu.html
(2) 必要書類
法人または個人が大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)に申し込む際、必要となる主な書類は以下の通りです。
①「大阪府中小企業向け融資申込書兼信用保証委託申込書」
金融機関の申込窓口で申し込む場合は緑色、府金融課や大阪信用保証協会、市町村の申込窓口で申し込む場合は緑色の用紙です。
②納税証明書
各税目の納税状況や納税者の基本情報(名前や住所など)が記載されている書類で、法人・個人ともに準備する必要があります。
③「法人登記謄本または履歴事項全部証明書」(法人のみ)
3ヵ月以内に発行されたものが有効です。
④「決算書および附属証明書」の写し(法人のみ)
2期以上になる場合は、最近2期分の証明書を用意します。
⑤「税務署受付印のある確定申告」(法人・個人)
こちらも、2期以上になる場合は、最近2期分のものを用意します。
⑥住民票抄本(個人のみ)
初めて大阪府中小企業制度融資に申し込む場合に必要な書類です。
⑦「申込者および連帯保証人の印鑑証明書」
3ヵ月以内に発行されたものが有効です。
以下の書類は、該当する業種に限り提出します。
⑧「営業に際して必要となる許認可・届出書等」の写し
飲食店営業や菓子製造業など、許認可や届出書が必要な業種に該当する場合に必要な書類です。
該当する業種については、下記のページで確認できます。
・参考:融資申込に必要となる許認可等(主な業種)
http://www.pref.osaka.lg.jp/kinyushien/seido001/kyoka.html
⑨「契約書」や「見積書」の写し
設備資金の資金調達を目的としている工事業者等が該当します。
2.大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)の概要
大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)には、異なる資金使途や融資対象者に幅広く対応するために、複数の融資メニューが用意されています。主な融資メニューの概要ついてまとめました。
(1) 開業サポート資金
「開業サポート資金」は、開業資金または設備資金が必要な中小企業者向けの融資です。事業計画を立てたものの、開業する資金が不足している、または業歴が浅く、民間の金融機関から融資を受けづらいとう人は、利用を検討してみると良いでしょう。開業サポート資金には、「開業資金」と「地域支援ネットワーク型」の2種類あります。
①開業資金
創業前または、創業してから5年未満の法人または個人が対象です。子会社化する予定がある、または子会社化してから5年未満という法人も含まれます。融資限度額は「開業資金A」が2,000万円で、「開業資金B」は1,500万円です。AとBあわせて申し込むことも可能です。
②地域支援ネットワーク型
会社または事業所の住所が「地域支援ネットワーク型取扱地域」内にあり、かつ立ち上げてから1年未満の法人または個人を対象にした制度融資です。融資限度額は「地域支援ネットワーク型A」が2,000万円で、「地域支援ネットワーク型B」は1,500万円と決められています(AとBの両方を申し込むことも可能)。
(2) 小規模企業サポート資金(小規模資金)
「小規模企業サポート資金(小規模資金)」は、規模の小さな会社向けの融資メニューです。利用資格は、大阪府内の同じ場所で、6ヶ月以上事業を継続している「小規模企業者」または「特別小口企業者」です。「特別小口企業者」とは、融資に該当する業種で1年以上の業歴があるなど、「中小企業信用保険法施行規則」第五条に定められている、小規模企業者を指します。
・参考:中小企業信用保険法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337M50000400014
小規模企業サポート資金(小規模資金)の融資限度額は2,000万円で、融資期間は7年以内です。ただし、ほかの信用保証協会から融資を受けていて、残高がある場合は、その分も限度額に含まれます。
(3) 小規模企業サポート資金(地域支援ネットワーク型)
地域支援ネットワーク型取扱地域内に事業所があり、利用を希望する金融機関の本店も、同地域内にあるという条件を満たした、小規模企業者向けの制度融資です。利用資格は、小規模企業サポート資金(小規模資金)の条件に加えて、「小規模事業者経営改善資金融資制度」利用者または商工会・商工会議所の会員(在籍してから1年以上経過している)であることと決められています。
小規模企業サポート資金(地域支援ネットワーク型)の融資限度額は2,000万円で、融資期間は7年以内です。
(4) 新型コロナウイルス感染症対応緊急資金
「新型コロナウイルス感染症対応緊急資金」は、新型コロナウイルス感染症によって経営が悪化した中小企業者向けの制度融資です。業歴が3ヶ月以上あり、次のいずれかの条件を満たした場合、融資が受けられます。
①直近1ヶ月の売上が、前年同月と比較して10%以上減った場合(1年以上継続して事業を行なっている中小企業者)
②前年同月と比べて、直近1ヵ月の売上が20%以上減少し、今後3ヵ月間の売上も20%以上減ると予想される場合
③国が指定している業種で、前年同期と比べて直近3ヵ月間の売上が5%以上減った場合
②と③を条件に申し込む際、市町村長からセーフティ保証4号(②)またはセーフティ保証5号(③)と認定される必要があります。認定は、以下のように「中小企業信用保険法」に基づいて行なわれます。
・引用:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/246/00000000/1annai%20.pdf
③の「国が指定している業種」とは、「セーフティネット保証5号の指定業種」のことです。対象業種については、中小企業庁のサイトで確認できます。
・参考:5号:業況の悪化している業種(全国的)
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.htm
新型コロナウイルス感染症対応緊急資金の融資限度額は、①~③いずれも2億円で、うち8,000万円が無担保です(融資期間は7年以内)。
(5) 新型コロナウイルス感染症対応資金(経営安定資金 危機関連)
事業を開始して3ヵ月以上1年1ヵ月未満の中小企業者や組合で、次の条件を満たしている場合、融資対象となります。
・前年同月と比べて、直近1ヵ月の売上が15%以上少ない
・前年同時期と比べて、今後3ヶ月間の売上が15%以上少なくなると見込まれている
新型コロナウイルス感染症対応資金(経営安定資金 危機関連)の資金使途は、運動資金または設備資金です。融資限度額は2億円(このうち無担保は8,000万円)、融資期間は7年以内です。
(6) 新型コロナウイルス感染症対応資金(保証料等補助型)
新型コロナウイルス感染症対応資金(保証料等補助型)は、セーフティネット保証4号または5号、危機関連保証のいずれかに該当する場合に受けられる制度融資です。融資限度額は4,000万円で、融資期間は10年以内と決められています。
各新型コロナウイルス感染症対応資金に申し込む際に必要となる「市町村長の認定書」は、以下の各市町村の窓口で入手できます。
・参考:セーフティネット保証等の認定にかかる市町村の担当課および関連HP
http://www.pref.osaka.lg.jp/kinyushien/seido001/ninteitantouka.html
3.まとめ
大阪府中小企業制度融資(信用保証付き)の融資対象者や申込に必要な書類、そして主な融資メニューの概要について説明しました。
融資メニューは、利用条件など内容が細かく規定されています。申請までの作業をスムーズに行なうには、事前に資金使途や現在置かれている状況を明確にしてから、条件にあったものを選ぶことがポイントです。
融資メニュー選びに迷ったら、資金調達の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。専門的なアドバイスを受けることで、問題が簡単に解消することもあります。制度融資を上手に利用して、円滑に事業を行ないましょう。
英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。