税理士との付き合い方/起業時から相談できる専門家

会社員のときは、税理士と全く縁がなかったという人がほとんどでしょう。しかし起業すれば、事業の税務をすべて自分でやらなくてはならず、税金の専門家である税理士がとても身近な存在になります。本記事では、税理士とは何かという基本的な話から、税理士選びのポイント、税理士を見直す際のシグナルなど、初めて起業する方でもわかりやすくまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

 

1.税理士とは

税理士とは、個人や企業、個人事業主などに対して、納税や申告といった税金にまつわるさまざまな業務の指導や節税対策のアドバイス、申告書類の作成などを行う職業です。税理士試験に合格するなど国家資格を取得した人だけが、税理士として活動することができます。

 

今は会計ソフトなども充実しており、税理士の世話にならなくても自分でできるのではないかと思う方もいらっしゃるかと思います。しかし起業すると、事業者としての納税義務が発生し、経理処理や、決算書などの書類作成も自分で行わなくてはなりません。税務や経理には複雑な決まりごとが多く、日々の仕事をこなしながら申告書類などを作成するのも負担がかかるものです。そうしたときに頼れるのが、税理士なのです。

 

これまで利用したことがない方にとって、税理士という職種は「何となく敷居が高い…」と感じるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。専門家として税務や経理のサポートや正しい知識、アドバイスを与えてくれる、よきビジネスパートナーと考え、あなたに合った税理士を探してみましょう。

 

 

2.税理士選びのポイント

たくさんの税理士の中から誰を選ぶのかは、非常に悩ましい問題です。契約してから「こんなはずじゃなかった…」とならないために、ご自身にマッチした税理士を選ぶポイントをご紹介します。

 

(1)目的をはっきりさせる

「日々の会計業務をサポートしてほしい」「申告書類の作成をお願いしたい」など、どのようなことを税理士にお願いしたいのかという利用目的を明らかにしましょう。税理士によって、特徴や得意とする分野は異なるため、目的を実現できる税理士かどうかの見極めは大切です。たとえば、起業したばかりで税務や経理の右も左も分からないといった場合には、実務の補佐をしてくれることと、困ったときに相談に乗ってくれることの両面でサポートできる税理士が必要となるでしょう。

 

(2)料金

税理士との契約には、料金がかかります。コストは事業を経営する上でも大事な要素ですから、しっかり確認する必要があります。毎月定額なのか、作業量によって料金が異なるのか、今後料金の変更はあるのかなど、細かい部分まで納得できる説明を受けましょう。料金体系があいまいな場合は、後々トラブルになる可能性もあります。わかりやすい料金体系になっているかどうかは、税理士選びのキーポイントといえそうです。

 

(3)税理士の発信する情報

税理士を探す際、インターネットで検索する方が多いかと思います。その際に確認したいのは、信頼に値する知識や実績があるか、あなたの要望を実現できる税理士かどうかといったことです。直接相談をしてみるのもよい方法ですが、判断基準の一つになるのが情報発信です。税務の知識やこれまでの事例など、税理士自身がホームページやメルマガなどで積極的に発信をしていれば、その中にあなたにとって有用な情報が含まれているか、そして要望を叶えてくれそうかどうかなどをチェックしましょう。

 

(4)相性

ビジネスパートナーといえど人間同士ですので、経営者と税理士の相性は非常に大切です。また税理士には、事業の経営状況をすべてさらけ出すことになります。信頼できて、ある程度腹を割って話せるような相手であれば、要望なども言いやすくなるでしょう。「コミュニケーションツールで気軽に連絡したい」、「プライベートまではあまり踏み込んでほしくない」など、あなたが好ましいと思う付き合い方を受け入れてくれるかどうかも、長くお世話になることを考えれば重視しておきたいところです。専門性や能力の有無、料金ももちろん重要ですが、実は、税理士選びには相性が重要なポイントであることは、ぜひ覚えておいてください。

 

 

3.税理士との関係を見直すとき

やっとよい税理士を見つけて契約をスタートしても、何年か付き合いを続けていくうちに不安や疑問が出てくるというのは意外とあることです。これまでお世話になってきた税理士との関係を見直すシグナルとは、どのようなものがあるのでしょうか。よくあるケースをご紹介します。

 

(1)レスポンスが遅くなった

質問に対しての返答の速度は、安心感や信頼につながります。遅くなった理由としては、単なる税理士の職務怠慢に限らず、顧客が増えて忙しくなっている可能性もあるでしょう。しかしそのような場合でも、税理士を追加したり、スタッフを増やしたりするのが、顧客のことを考えた対応といえるのではないでしょうか。また、申告時や税務調査などで「緊急に知りたい!」というときもあるものです。たかがレスポンスと思わず、見直しのきっかけとして意識するようにしましょう。

 

(2)アドバイスが少なくなった

契約当初から比べると、助言をあまりもらえなくなったという場合、税理士の知識や経験不足のため、今現在のあなたの事業規模に見合ったアドバイスができなくなっていることが考えられます。また、長い付き合いから「この程度のアドバイスで大丈夫だろう」といった、関係のマンネリ化に起因している可能性もあります。いずれにしても、かかり続けるコストを考えれば、早めに見直しを検討した方がよいでしょう。

 

(3)料金に疑問が出てきた

「本当にこの料金が妥当なのだろうか」といった疑問を感じたら、料金についてあらためて考えてみましょう。長年料金が見直されていない場合、高止まりしている可能性もあります。報酬額は税理士による自由設定のため、ほかの税理士から何件か見積もりをとって比較検討してみるのがおすすめです。

 

 

4.まとめ

税理士はサービス業ですから、臆することなく、自分がやってもらいたいことを最もリーズナブルにやってくれる税理士を選びましょう。特に不慣れなことが多い起業時は、親身になって相談に乗ってくれる税理士と出会うことが安心感につながりますし、今後の事業進行にも大きな影響を与えます。親しい間柄になっても、コストやサービスの質などについては客観的なチェックをお忘れなく。そうしたことを含めて、よい関係を続けられる税理士は起業人にとって大変心強い存在になることでしょう。

執筆者:吉田 裕美(よしだ ゆみ)

金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。

お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。