これから事業を始めようと考えている人なら、一度は聞いたことのある「融資」という言葉。何となくは知っていても、誰かに説明するほどは理解していないという人も多いのではないでしょうか?そこで本記事では、融資とは何か、融資にはどんな種類があるのか、また融資を受けるメリット・デメリットなどを起業初心者でもわかりやすく解説します。あらためて融資について考えてみましょう。
1.融資とは
融資とは、もともと“資金を融通する”という意味があり、金融機関などが人や企業などへお金を貸すことを指します。
融資を受ける側からすれば、融資は「必要なお金を借りること」であり、個人ならば住宅や車を獲得するためのローンなど、法人ならば事業を運営するための資金の借り入れなどで利用されています。
融資で借り入れたお金には返済義務が生じますので、決められた利息とともに返済期日までに返していく必要があります。そのため、融資を受ける際には「返済能力があるか」といった所定の審査が設けられており、不動産などの担保や保証人が必要なケースもあります。
特にこれから起業を考えている人は、事業を新しく立ち上げるとき、事業を拡大したいときなど、たくさんの資金が必要となります。起業するにあたり「融資」は、必ず知っておくべき事業資金の調達手段といえるでしょう。
2.融資の種類
融資には、「公的融資」と「民間融資」の2種類があります。
「公的融資」とは、国や地方自治体といった公的機関が行う融資で、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)など政府系金融機関からの融資も含まれます。一方、公的機関ではない銀行や消費者金融などが行う融資は「民間融資」といわれています。
「融資」と一口に言っても、貸し手は地方自治体からノンバンクまでさまざまで、融資制度の特徴もそれぞれ異なります。その中でも、起業人の多くに利用されている、日本政策金融公庫と民間金融機関の特徴についてご紹介します。
(1) 日本政策金融公庫
日本政策金融公庫(日本公庫)とは、国が全ての株式を保有する政策金融機関です。「一般の金融機関が行う金融の補完」を目的として、国民や中小企業者などへの事業支援や融資といった業務を主に行なっています。
さまざまなニーズに合わせた融資制度が用意されており、たとえば個人企業・小規模事業者向けには以下のような資金の融資制度があります。
- 新規開業資金
新たに事業を始める人や、事業開始後間もない人が対象。 - 女性、若者/シニア起業家支援資金
女性または35歳未満か55歳以上の人で、新たに事業を始める人などが対象。 - 新事業活動促進資金
経営の多角化や事業転換などで、第二創業などを図る人が対象。 - 経営環境変化対応資金
売上が減少するなど業況の悪化している人が対象。
一般的に創業したばかりの事業は、実績や信用度が少ないため、民間金融機関からの融資を受けるのは難しいケースも多くあります。その点、日本政策金融公庫には、創業時から利用できる融資制度が整っています。また一定の要件を満たせば、無担保・無保証人で融資を受けられる制度があることや、民間融資より比較的低い金利設定であることも特徴です。これから起業しようとしている人にとって心強い存在といえるでしょう。
参考:日本政策金融公庫
(2) 民間金融機関
民間金融機関は、誰もが知るメガバンクだけでなく、地方銀行、信用金庫、信用組合など、全国にたくさんあり、ほぼすべての金融機関に融資制度が用意されています。
金融機関の融資には、「プロパー融資」と「保証付融資」があります。
「プロパー融資」とは、金融機関が行う通常の融資のことです。「保証付融資」とは、信用保証協会による保証が付いた上で実行される融資を指します。
信用保証協会とは、事業者への融資をスムーズに行うために設立された公的機関です。金融機関からの借り入れの際、事業者の連帯保証人となって資金調達をサポートしてくれるほか、万一返済ができなくなった場合には、一時的に金融機関へ弁済をするしくみも持っています。もちろん「保証付融資」であっても、金融機関による融資の審査は行われますし、保証を受けるための審査や手数料もかかります。しかし、創業したてではなかなか得づらい信用度を高められることは、起業人にとってメリットといえます。
金融機関からの融資は、公的融資に比べるとハードルが高く感じるかもしれませんが、全国に窓口があるため相談がしやすい、信用が得られれば大口の融資も受けられるといった利点もあります。検討する際は、「保証付融資」の活用も視野に入れて考えてみるとよいでしょう。
3.融資を受けるメリット、デメリット
もちろん、「自己資金が十分にあるため、融資を受ける必要がない」という人もいらっしゃることでしょう。事業資金を得る手段としては、ベンチャーキャピタルに自社株を購入してもらい出資を受けるといった方法もあります。しかしながら、起業者の大半は、起業資金を調達しようというとき、まず「融資」を考えるのではないかと思います。この項では、融資を受けるメリット、デメリットを整理してみましょう。
(1) 融資を受けるメリット
手持ちの資金を増やして、安定した事業経営ができることは一番のメリットです。また、出資を受ける場合は、株を保有する出資者に経営の一部の権利を握られるケースがありますが、融資の場合、そのようなことはありません。第三者に経営へ直接介入されることなく、必要な資金が得られるという点も、融資のメリットといえるでしょう。
(2) 融資を受けるデメリット
返済する必要のない出資金と異なり、融資を受けたお金には元本や利子の返済義務が発生します。将来の経営状況によっては、毎月の返済が大きな負担となる可能性があることはデメリットといえるでしょう。万一、返済を滞納してしまった場合、新たな融資が受けづらくなることもあるので、注意が必要です。
4.融資を受けるために必要なこと
実際に融資を受ける場合、手続きの流れとしては以下のような手順となります。銀行からの融資を例に見てみましょう。
- 融資を受ける銀行を決めて申し込みをする
- 銀行にて審査が行われる
- 審査が通れば融資が実行される
ここで重要となるのは、1の申し込み時に必要な書類と、2の審査時に行われる面談などの準備です。
書類をもれなく準備する
銀行によってそれぞれ異なりますが、主に提出を求められる書類をご紹介します。
- 事業概要
- 事業計画書
- 資金繰り表
- 決算書
- 商業登記簿謄本
- 納税証明書
- 印鑑証明書 など
不足しているものがあると、融資の実行が遅れる場合もあります。申し込みをする前によく確認して、もれのないように準備しましょう。
面談、質問対策をしっかりしておく
申し込みが完了すると、銀行で融資の審査が始まります。審査はすべて提出書類のみで行われるわけではありません。銀行の担当者と直接面談をしたり、電話で質問に答えたり、といったことも必要に応じて行われます。
聞かれたことに、正直に答えていけばよいのですが、突然いろいろ聞かれると焦ってしまうこともあるかと思います。事前に、融資を受ける銀行の考え方や審査の着目点を調べておいたり、自社のアピールポイントを効果的に説明できるよう整理したりしておけば、落ち着いて臨むことができるでしょう。
5.まとめ
融資は、世の中で最もよく使われる資金調達手段です。融資を行う機関や融資制度にはさまざまな種類があり、選択肢も多くあります。しかし、意外と手間がかかるのが必要書類などの事前準備です。起業時は、ただでさえやるべきことがたくさんあり、そこまで手が回らないという人もいることでしょう。ですが、事業を進めていく上で、お金のことは特に慎重に取り組みたいところ。困ったときは、融資の専門家に相談してみることをおすすめします。
金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。
お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。