新規事業を始めるときや会社の規模を拡大するときなど、様々なシーンで資金調達が必要になります。より有利な条件で調達するためには、金利や仕組みなど、資金調達方法に関する知識が必要です。今回は、企業における資金調達の方法やメリット・デメリットについてご紹介します。
企業の資金調達方法
事業を行う上で、いつ、どのように資金調達するかというのは、大切なことです。業績不振や予期せぬトラブルなどにより資金繰りがピンチになったときに限らず、事業を拡大するための投資や新社屋の設営など、資金調達は様々なシチュエーションで必要になるのです。また、同じ金額の融資を受ける場合でも、使用目的や返済年数、業種などによって金利や条件は変わります。最も良いタイミングで有利な融資が受けられるよう、普段から情報を入手することが重要です。では、企業が資金調達する際に、利用できる方法にはどのようなものがあるのでしょうか。主な方法は以下の3つです。
【企業が利用できる資金調達方法】
- 国や自治体の融資
- 民間の融資
- 出資
以下で、それぞれの資金調達方法について解説します。
国や自治体の融資
「融資」とは、金融機関が事業や不動産取得など明確な使途のために資金を貸し出すことです。融資を受ける場合には、使用目的を明らかにし、事業計画書や返済計画を金融機関に提出して、審査を受けます。審査で収益性が認められなければ、融資を受けられないこともあります。
国および自治体から受ける融資制度としては以下の2つが利用できます。
【国や自治体による融資の種類】
- 国が100%出資する日本政策金融公庫による融資
- 自治体が低利で融資を受けられるように金融機関を紹介する制度融資
引用:中小企業向け制度融資
このほか、都道府県が独自に設けている公的融資も存在するので選択肢のひとつとして知っておくと良いでしょう。
引用:中小に独自融資制度 47都道府県 9割が実施
メリット
国と地方自治体が行う融資には、下記のようなメリットがあります。国からの融資を受けると企業としての信頼性が高まるため、他の融資も受けやすくなるのが大きなポイントです。
- 金利が低く利用しやすい
日本政策金融公庫は国が100%出資する金融機関で、主に中小企業の活性化を目的に融資を行います。金利が低く設定されており、返済期間が長いところが魅力です。また、返済計画の変更にも対応してもらえます。
- 制度融資は審査に通りやすい
制度融資は、融資を受ける側と金融機関の間に自治体と信用保証協会が入るため、審査のハードルが低めです。もしも返済ができなくなった場合は、いったん信用保証協会に代位弁済してもらい、融資を受けた側は信用保証協会に返済していくことになります。
引用:制度融資とは?低金利が魅力の資金調達方法
引用:保証制度のご案内
引用:信用保証協会
デメリット
国や地方自治体など、公的機関からの融資にはデメリットもあります。事業によってはかえって利用しにくい場合もあるので注意しましょう。
- 審査に時間を要する
日本政策金融公庫は融資の審査の際、銀行残高や資金繰りなどを詳細に確認します。審査期間に3週間程度は必要です。そのため、スピーディーに融資を受けられるとは言えません。
引用:日本政策金融公庫
- 原則的に保証人が必要で、他機関からの借り換えはできない
原則的に保証人が必要です。また、すでに他の金融機関で融資を受けている場合は、その分の借り換えはできません。その場合は、新規融資あるいは追加融資を申し込むことになります。
引用:既存の公庫借り換え、それも特例に当てはまる場合に限る
- 制度融資の場合は信用保証協会に手数料を支払わなければならない
制度融資の場合は、融資を受ける側と金融機関の間に自治体と信用保証協会が入ります。信用保証協会が保証人の代わりを務めてくれますが、一定の信用保証料を支払う必要があります。
引用:信用保証協会の信用保証料
以上の理由から、日本政策金融公庫の融資は、時間に余裕があり、他の銀行ですでに融資を受けていない企業におすすめです。
民間の融資
民間の金融機関からの融資には、銀行や信用金庫、信用組合、消費者金融からの借入れがあります。民間の融資の種類には、大きく分けて以下のようなものがあります。
引用:融資とは?融資の種類とメリット・デメリット
- 金融機関から直接融資を受ける「プロパー融資」
- 信用保証協会による保証を付ける「信用保証付融資」
- 法人経営者や個人に対する融資の「ビジネスローン」
この他、日本政策金融公庫と民間金融機関が連携する「協調融資」があります。
引用:協調融資(日本政策金融公庫)
メリット
民間の金融機関は、国や自治体と比べて利便性が高いと言えるでしょう。特に地域密着型の企業の場合、信用金庫や信用組合から情報や顧客の斡旋などを受けられるメリットもあります。民間の金融機関による融資の主なメリットは以下の通りです。
- 審査のスピードが速い
日本政策金融公庫による国の融資と比べると、審査に要する期間が短く、必要な提出書類が少ないのでスピーディーに資金調達が可能です。
- 大口融資の可能性もある
大手銀行の場合、信用が得られれば国や自治体による融資より大口の融資が受けられる可能性があります。また、支店が多いため、相談に行きやすいという点もメリットです。
デメリット
民間の金融機関からの融資は、借入先によって大きく条件が変わります。特に消費者金融の場合は金利が高く、業者によって幅があるので、事前によく確認しましょう。
- 金利が高い
国や自治体の融資に比べ、民間金融機関からの融資は金利が高くなります。銀行や信用金庫では企業の信用によって金利に幅があります。なかでも消費者金融は、非常に高利なケースが少なくありません。
- 銀行や信用金庫などは審査が厳しい
銀行、信用金庫、信用組合の場合、創業資金の調達や創業後間もない企業に対する融資においては、審査が厳しい傾向にあります。また、大手銀行は基本的に大企業への融資を中心としているので、融資が受けられないこともあるので注意しましょう。
以上から、銀行や信用金庫、信用組合はすでに実績を積んでいる企業向け、消費者金融は金利が高くてもいいから今すぐ資金が必要な個人向けと言えそうです。
出資
融資とよく似た言葉に「出資」があります。どちらも資金調達の一種ですが、出資の場合は返済の必要がなく、金利もつかないのが特徴です。その代わり、出資者は事業の成長に合わせた配当金などを受け取ります。また、会社の経営判断に関与することもあります。代表的な出資元には次の3種類があります。
- ベンチャーキャピタル
創業時や若い企業など、成長が期待される未上場企業に出資し、事業が軌道にのるよう支援を行います。
- 個人投資家
個人が企業に投資を行います。共同経営者として、個人投資家が支援やアドバイスを行うこともあります。
- クラウドファンディング
インターネット等を通じ、不特定多数の人が目的に応じて資金提供を行います。
メリット
出資を受ける場合、大きなメリットがあります。資金をどのように使い、事業展開をしていくのか、事業計画をよく考えることが重要です。
- 資金繰りに余裕ができる
返済も金利も必要ないため、事業に使える資金が豊かになります。ただし、出資者に対し、収益に応じて配当金を支払います。
- 担保や保証人が不要
出資は、事業の将来性に期待して行われる投資なので、担保や保証人が不要です。
デメリット
出資の際の取り決めにもよりますが、まったく見返りなしに出資を受けられるわけではありません。返済不要に対する条件が生じることを知っておきましょう。
- 経営の自由が阻まれることがある
出資者は資金を提供する代わりに、経営や事業計画に関与することがあります。株式を配当とした場合、株主として経営への参画を求められることも少なくありません。
- 税金が高くなる場合がある
出資を受けると、その金額が資本金にプラスされます。資本金が一定額を超えると、事業税の均等割が増えたり、税額控除が使えなくなったりすることもあります。
引用:均等割について(4)
引用:控除について
以上、出資を募る際にはデメリットもありますが、事業の将来性に自信があり、出資者による経営関与も受け入れる覚悟があれば、事業を展開するうえで大きなメリットになると言えるでしょう。
まとめ
事業を継続していくために欠かせない資金調達ですが、どの方法を選んでもメリットとデメリットがあります。それぞれの特徴をよく考慮して融資や出資を受けるようにしましょう。事業を大きく成長させるためには、事業計画に最も合った資金調達方法を選び、金融機関や出資者の信用を得ていくことが重要です。