広島県が実施している制度融資の利用を検討しているものの、どのような内容かよくわからない、という人も多いのではないでしょうか。
広島県制度融資は、県が中心となって実施している中小企業者向けの融資制度です。独自に融資要件や融資メニューを設定し、金融機関等と連携することで、中小企業者が利用しやすい条件を整えています。自分の条件にあった融資制度を選ぶことが、資金調達を成功させるポイントと言えるでしょう。
本記事では、広島県制度融資の概要をはじめ、融資対象者や融資メニューの種類についてわかりやすく説明します。
1. 広島県制度融資とは
広島県制度融資とは、「事業資金の円滑な供給」を目的に、広島県が中心となって実施している融資制度のことです。
広島県制度融資には、「県費預託融資制度」と「無担保スピード保証融資制度」の2種類あります。「県費預託融資制度」とは、県が金融機関に貸付原資の一部を預託する制度です。2者が連携することで、固定金利・長期による資金提供を実現しました。
「無担保スピード保証融資制度」は、県と金融機関に加えて、広島県信用保証協会の3者が協調することによって運営されています。広島県信用保証協会が公的保証人となることで、融資対象者は第三者保証なしで融資を利用できるようになるなど、直接金融機関に申し込むよりも、融資のハードルが低くなります。
広島県制度融資を利用できるのは、広島県内に事業所のある中小企業者です。広島県では、「中小企業者」「小規模企業者」「組合等」について、それぞれ以下のように定義しています。
「中小企業者」
以下の業種で、従業員数または資本金のいずれかが該当すれば、中小企業者と見なされます。
・引用:広島県制度融資のご案内
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/75/1168587452727.html
「小規模企業者」
中小企業者の中でも、以下のような、小規模な事業を営んでいる個人または法人が「小規模企業者」と見なされます。
・商業・サービス業(宿泊業・娯楽業は除く)を営む従業員5人以下の中小企業者
・上記以外の業種を営む従業員20人以下の中小企業者
・従業員20名以下の医業を営む法人(消費生活協同組合は除く)
「組合等」
広島県では、以下の団体を「組合等」としています。
“事業協同組合,事業協同小組合,企業組合,協業組合,商工組合及び商店街振興組合,並びにこれらの者で組織する連合会”
・引用:同上
広島県制度融資の対象業種は、広島県信用保証協会が規定している「信用保証協会の保証対象業種」に準じています。
対象となる業種は、以下のページで確認できます。
・参考:対象となる業種(広島県信用保証協会)
https://hiroshima-shinpo.or.jp/_files/gyosyulist.pdf
広島県制度融資の対象外となる業種は、以下のページが参考になります。
・参考:信用保証協会の保証取り扱いができない業種等
https://hiroshima-shinpo.or.jp/_files/hitaisyougyousyu_20200515.pdf
このように、営んでいる事業(または開業を予定している事業)が、広島県制度融資の対象となる業種に属していて、広島県が定義する「中小企業者」と見なされた場合、制度を利用できる可能性があります。次の章では、広島県制度融資が実施している、融資制度の種類について説明します。
2.広島県制度融資の概要
広島県制度融資には、資金調達の目的別に、複数の融資制度が用意されています。各融資制度には、それぞれ融資要件や融資条件が設定されています。主な融資制度である「創業支援資金」「一般資金」「小口資金」「新型コロナウイルス感染症対応資金」についてまとめました。
(1) 創業支援資金
県内で創業する予定がある、または創業して日が浅い中小企業者を対象とした融資制度です。事業の設立または拡大に必要な資金として、3,500万円を上限に融資します。
創業支援資金の融資期間は、10年以内と決められています。貸出利率は固定金利で、保証付きの利率は運転資金か設備資金で異なり、さらに、融資期間別に設定されています。
創業支援資金を利用するには、以下のいずれかの要件に該当することが必要です。
・1ヵ月以内に創業する予定のある個人
・2ヵ月以内に会社を設立する予定のある法人
・創業してから5年未満の個人または法人
・新たに子会社を設立する予定のある法人
過去に廃業・解散した会社の経営者や役員で、再び事業を始める予定のある人も、創業支援資金の融資対象者です。ただし、廃業した日から5年未満である場合に限ります。
(2) 一般資金
経営安定支援融資(一般資金)は、一般的な事業資金を必要とする中小企業者や組合等を対象とした融資制度です。
融資限度額は、中小企業者は9,000万円までで、組合等は1億2,000万円(転貸資金は、上限5,000万円)までです。一般資金は、運転資金または設備資金の融資が可能ですが、組合等(転貸資金)が対象としているのは、設備資金のみであり、1組合員当たりの融資限度額は、1,500万円までと決められています。
融資期間は、運転資金・設備資金共に最長10年間と決められています。一般資金の貸出金利は固定金利(保証付き)ですが、1.5~1.9%と、利用期間によって異なります。保証人は、原則として不要です(法人の代表を除く)。
(3) 小口資金
小規模企業者を対象に、運転資金または設備資金を融資する制度です。融資対象者は、広島県内で事業を営んでいることに加えて、支払い義務のある税金を完納しているなどの要件を満たす必要があります。
小口資金の融資限度額は2,000万円で、融資期間は最長10年間です。保証付きの金利は、1.0~1.4%に設定されています。
融資の利用を希望する場合は、「納税申告書(写し)」または「決算書」を準備します。営業許可証など、許認可が必要な業種に属している場合は、当該許認可証等の写しが必要です。
(4) 新型コロナウイルス感染症対応資金
新型コロナウイルス感染症対応資金は、新型コロナウイルス感染症の影響で経営が悪化し、資金繰りに困っている中小企業者を支援する融資制度です。実質無利子や無担保などを融資条件に盛り込み、利用者の負担を減らしています。
この融資制度を利用するには、市町村長から、「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」または「危機関連保証」の認定を受けている必要があります。
セーフティネット保証と危険関連保証は共に、中小企業信用保険法に定められている要因により、売上が下がった中小企業者を救済するために設定された、保証制度のことです。
各保証制度の詳細は、中小企業庁のホームページで確認できます。
・参考:セーフティネット4号
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_4gou.htm
・参考:セーフティネット5号
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.htm
・参考:危険関連保証
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_crisis.htm
セーフティネット4号・5号・危機関連保証の認定書を受けていることに加え、広島県では、新型コロナウイルス感染症対応資金の融資対象者を、以下のように規定しています。
①新型コロナウイルス感染症の影響で、売上高が5%以上落ち込んだ個人事業主(小規模のみ)
②新型コロナウイルス感染症の影響で、売上高が15%以上落ち込んだ法人
③新型コロナウイルス感染症の影響による売上高減少率が、5%以上15%未満の法人
新型コロナウイルス感染症対応資金の融資限度額は6,000万円で、融資期間は最長10年間です。貸出金利は、0.8~1.2%と設定されていますが、①と②の場合、当初3年間は、実質無利子となります。この制度は原則無担保で、保証人も法人代表を除き、原則必要ありません。
3.まとめ
広島県制度融資の概要や融資対象者、融資制度の種類について説明しました。広島県制度融資は、事業資金が必要な中小企業者を資金面で支援するために、利用しやすい条件と、複数の融資制度を設定しています。各融資制度には、それぞれ融資要件や融資条件が設定されていますので、申し込む前によく確認しておくことが大切です。
どの融資制度を選んだらよいのか迷ったら、資金調達の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。専門家からアドバイスを受けることで、手続きがスムーズに進むようになります。
広島県制度融資を活用して、資金調達の問題を解消していきましょう。
英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。