奈良県の制度融資/中小企業の資金調達のために

奈良県では、中小企業者向けに制度融資を実施しています。制度があることは知っているものの、具体的にどのような内容なのか、良くわからないという人も多いのではないでしょうか。

 

奈良県中小企業融資制度には、借入金額や資金用途などにあわせて、複数の融資制度が設けられています。各融資制度には、融資対象者の要件があるため、融資を受ける前に確認しておくことは不可欠です。

 

そこで本記事では、奈良県中小企業融資制度の利用を検討している人向けに、制度の概要や融資対象者、そして、主な融資制度の種類について説明します。

 

 

1.     奈良県中小企業融資制度とは

「奈良県中小企業融資制度」とは、奈良県と奈良県信用保証協会、そして、金融機関の3者が連携して実施している融資制度のことです。この制度では、3者がそれぞれの役割を担い、資金調達を必要としている中小企業者が、融資を受けやすいよう仕組みを整えています。

 

奈良県は、融資限度額や利率など融資条件を設定し、保証料や利息を負担します(一部または全額負担)。奈良県信用保証協会は、融資を受ける中小企業者の公的保証人として、融資を受ける中小企業者をサポートし、融資を実施するのは取扱金融機関です。奈良県中小企業融資制度が、融資を受ける人の経済的な負担が減る、金融機関からの信用を得やすいなどと言われている理由は、この制度の仕組みにあります。

 

奈良県中小企業融資制度を利用できる対象者は、県内に事業所のある「中小企業者」です。県が定めている「中小企業者」については、以下の表を参考にしてください。

 

・引用:制度融資とは(奈良県)

http://www.pref.nara.jp/secure/61912/shikumi.pdf

 

資本金または従業員数のいずれかに該当すれば、「中小企業者」と見なされます。NPO法人(特定非営利活動法人)の場合は、従業員数をもとに、該当するかどうかが判断されます。組合は、「協業組合」「事業協同組合」「商工組合」など、その定義は法律(組合法や団体法)に則っています。

 

 

2.奈良県中小企業融資制度の概要

奈良県中小企業融資制度は、幅広い融資に対応するため、さまざまな融資制度を実施しています。ここでは、主なものについて、その概要や融資対象者、融資限度額などをご紹介します。

 

(1)     創業支援資金

奈良県内で開業を予定している、または開業してから5年未満の中小企業者を対象とした制度です。創業支援資金には、細かく分けて以下の4種類あります。

 

①創業支援資金(責任共有制度対象外)

②創業支援資金【認定枠】(知事認定要)(責任共有制度対象外)

③創業支援資金【南部・東部枠】(知事認定要)(責任共有制度対象外)

④女性・若者・シニア・UIJターン創業支援資金(知事認定要)(責任共有制度対象外)

 

なお、飲食店や旅館などの宿泊施設を経営している人は、以下のページで紹介されている、創業支援資金が該当します。

 

・飲食店・宿泊施設整備(奈良県)

http://www.pref.nara.jp/5222.htm

 

①創業支援資金(責任共有制度対象外)

県内で事業をスタートさせる予定がある、または事業を開始して5年未満の人を対象に、事業資金を融資します。融資限度額は3,500万円で、最長7年間利用可能です。

 

「離職者等起業促進支援」とは、知事から確認を受けた人(知事確認申請日の時点で60歳以上または、申請日の前5年以内に離職した人)が受けられる支援のことです。「離職者等起業促進支援」に認定された場合、融資限度額は1,500万円までとなります。

 

②創業支援資金【認定枠】(知事認定要)(責任共有制度対象外)

県内で開業する予定がある、または開業してから1年未満の中小企業者の中で、知事が「優れた事業計画を有する」と認定した人を対象にした制度です。

 

融資の上限は1,500万円までで、融資期間は最長7年間です。保証料と利息は、奈良県が全額負担します。

 

③創業支援資金【南部・東部枠】(知事認定要)(責任共有制度対象外)

奈良県南部地域または東部地域の市町村で、事業を始める予定がある、または開業して1年未満の中小企業者のうち、知事によって「認定経営革新等支援機関の支援を受けた」と認定された人に対し、1,500万円を限度に融資します。融資期間は最長7年間です。

 

 

④女性・若者・シニア・UIJターン創業支援資金(知事認定要)(責任共有制度対象外)

この制度の対象者は、県内で開業予定がある、または創業してから1年未満の「女性」「35歳未満の人」「55歳上の人」「UIJターンに該当する人」です。加えて、知事によって「認定経営革新等支援機関の支援を受けた」と認定されたことも、要件に入ります。

 

この制度の融資限度額は1,500万円で、融資期間は7年間と設定されています。

 

(2)     一般資金

事業資金を必要とする中小企業者または小規模企業者を対象とした、融資制度です。「一般資金」には、以下の融資制度があります。

 

①経営強化資金

②小規模企業者支援資金(責任共有制度対象外)

③地域産業振興資金

④組織強化育成資金

 

①経営強化資金

事業資金の融資を検討している中小企業者に対して、5,000万円を限度に融資します。融資期間は10年間と決められています。経営強化資金の保証料率は、0.45から1.56%と設定されていますが、「創業支援資金」を利用している場合は、0.45から0.80%となります。

 

②小規模企業者支援資金(責任共有制度対象外)

この制度は、事業資金の融資を検討している小規模事業者が対象です。融資限度額は2,000万円で、最長10年間利用できます。

 

③地域産業振興資金

事業資金を必要としている地域産業事業者向けの、融資制度です。上限5,000万円を限度に、10年間の融資期間を設定しています。ただし、取扱金融機関の中に「商工組合中央金庫」は、含まれていません。

 

④組織強化育成資金

団体または団体に属する組合員を対象に、設備資金または運転資金を融資する融資制度です。対象となる組織は、「中小企業等協同組」や「商工組合」など。商工中金が貸付対象としている組合も、融資対象に入ります。

融資限度額は、組合が1億円までで、組合員は1人あたり7,000万円(設備資金の場合は8,000万円)と決められています。

 

(3)     新型コロナウイルス感染症対応資金

「新型コロナウイルス感染症対応資金」とは、新型コロナウイルス感染症によって業況が悪化した中小企業者に対する、緊急支援制度の一つです。

 

この制度を利用するには、事業所のある市町村長より、以下のいずれかの認定を受ける必要があります。

 

①セーフティネット保証4号

②セーフティネット保証5号

③危機関連保証

 

各保証制度の定義は、以下のとおりです。

 

①セーフティネット保証4号

新型コロナウイルス感染症の影響によって、直近1ヶ月の売上が、前年同月のそれと比べて20%以上減り、今後2ヶ月間(合計3ヶ月間)の売上高も、前年同期と比べて20%以上減ると予想される人。

 

②セーフティネット保証5号

「指定業種」に該当する事業を営み、直近3ヶ月間の売上高が、前年同期よりも5%以上減った人。

 

「指定業種」については、以下のページで確認できます。

・参考:セーフティネット保証5号の指定業種

http://www.pref.nara.jp/secure/96679/%E6%8C%87%E5%AE%9A%E6%A5%AD%E7%A8%AE(%E4%BB%A4%E5%92%8C2%E5%B9%B45%E6%9C%881%E6%97%A5%EF%BD%9E%E4%BB%A4%E5%92%8C3%E5%B9%B41%E6%9C%8831%E6%97%A5).pdf

 

③危機関連保証

直近1ヵ月の売上が、前年同月と比べて15%以上減少し、今後2ヶ月間(合計3ヶ月間)の売上高も、前年同期と比べて15%以上減ると予想される人。

 

上記①~③のいずれかに認定された人は、「新型コロナウイルス感染症対応資金」の融資対象者となり、6,000万円を上限に、最長10年間融資を利用できます。

 

 

3.まとめ

奈良県中小企業融資制度の概要や融資対象者、利用できる融資制度について解説しました。

 

奈良県が中心となって実施しているこの制度は、公的保証人を得たり、保証料の負担が軽減されたりと、直接金融機関から融資を受けるよりも、利用しやすいというメリットがあります。

 

また、開業資金を調達したい、新型コロナウイルス感染症によって悪化した経営状態を回復させたいなど、悩み別に融資制度を選ぶことも可能です。

 

融資制度の選択や融資額の決定、申し込みなど、融資を検討する過程で問題にぶつかったときは、資金調達の専門家に相談することをおすすめします。適切な額の融資をタイミング良く受けて、経営を軌道に乗せていきましょう。

 

 

佐藤 世莉(さとう せり)

英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。