テレワークとはITツールを活用して自宅やサテライトオフィス等で働くこと。働き方改革の一環としてテレワークを導入する企業が増えています。
しかし、「テレワークを導入する方法や注意点が分からない」といった声も聞かれます。
そこで今回は、テレワークの基礎知識、メリット・デメリット、導入時の留意点について解説します。
1.テレワークとは
テレワークとは「tele:離れた場所」+「work:働く」という意味で、本社オフィスから離れた場所で働くことです。ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用して場所や時間に縛られずに働ければ、労働生産性の向上とワークライフバランスの実現を両立させることができます。
日本テレワーク協会によると、テレワークは以下の3種類に分類されています。
■在宅勤務
在宅勤務とは自宅で仕事をすることで、インターネットの活用以外に電話やファックスを用いた勤務も在宅勤務に含まれます。
■モバイルワーク
モバイルワークとはパソコンや携帯電話を使って場所を限定せずに働くこと。移動中の電車やタクシーの中、カフェ、顧客先などでの労働が対象です。
■サテライトオフィス勤務
サテライトオフィスとは、本社以外の場所に設置された小規模オフィスのことです。パソコン等の通信機器を利用して、自社専用サテライトや他社と共同の作業スペース、レンタルオフィスなどで業務を行います。
2.テレワーク導入のメリットとデメリット
テレワークと聞くと良い面ばかりが強調されがちですが、押さえておくべきデメリットがあります。テレワーク導入のメリットとデメリットを整理してみましょう。
(1)テレワーク導入のメリット
メリット1:労働生産性向上につながる
テレワークを導入すると、従業員の通勤負担が軽減して生産性向上につながります。
在宅勤務になれば移動時間はゼロ。自宅近くのサテライトオフィス勤務になった場合も通勤時間が短縮して通いやすくなります。満員電車や長距離通勤から解放されれば、万全の状態で業務に取り組めるでしょう。
生産性がアップするもうひとつの理由が、勤務時間中に邪魔が入らないからです。オフィス勤務だと、誰かに話しかけられたり、周囲の雑音が気になって作業が途切れることがありますが、在宅勤務で静かな環境が確保できれば業務に集中しやすいです。
メリット2:人材確保や流出予防に役立つ
テレワークを導入すると雇用対象になる人が増えるのがメリッです。1日も出社せずに働けるようになれば、日本全国だけでなく海外在住の人も採用できます。
さらに、多様な働き方が実現することで、人材の流出を防ぐ効果もあります。
・通勤ラッシュによるストレス
・育児や介護と両立できない
・人間関係トラブル
など、通常のオフィス勤務であれば退職に繋がりかねない要因に悩まされることなく仕事を続けられる可能性が出てくるからです。
メリット3:企業のイメージが良くなる
「働き方改革に積極的に取り組んでいる健全な企業だ」と思われるため、テレワークを導入している企業のほうが世間からのイメージが良いです。社の評判が良くなれば、商品やサービスの売上アップにつながるでしょう。
また、求職者に人気があるのは働きやすい環境が整っている優良企業です。テレワークを導入すれば求職者からのイメージも良くなって、求人への応募数が増えるのもメリットです。
メリット4:ワークライフバランスが整いやすい
テレワークを導入するメリットには、プライベートの時間を確保できることでワークライフバランスが整いやすいことも挙げられます。
通勤時間の短縮により、家族や友人と過ごす時間が増えたり余暇活動を楽しむ余裕ができます。家族の急な体調不良時に在宅勤務に切り替えられる制度があれば、育児や介護をしやすいでしょう。
メリット5:BCP(事業継続計画)対策になる
BCPとは、災害やテロ攻撃等の緊急事態が起きた時に、事業を継続し早期復旧をするための計画です。複数の場所で業務が行える仕組みを構築すれば、本社にもしものことがあっても事業を継続できます。
(2)テレワーク導入のデメリット
デメリット1:ICT環境を構築する必要がある
テレワーク導入のデメリットは、遠隔業務を行うための環境構築に初期費用や手間がかかることです。
在宅勤務をするなら、自宅のWiFi環境や外部から安全にアクセスする方法まで配慮しないといけません。ICT環境を整備せずに制度だけを導入すると、業務が円滑に行えず生産性が低下したり情報漏洩のリスクが高まります。
デメリット2:労務管理が難しい
テレワークを導入すると、労務管理が難しいのがデメリットです。働く場所が分散すると、出退勤時間の管理、残業や休日の申請承認などがしづらいです。導入前に、遠隔でも労務管理がスムーズに行える仕組みを整えておきましょう。
また、目の前に部下がいればサボっているか一生懸命働いているかが一目瞭然ですが、従業員の顔が見えないと働き具合を把握できません。何らかの方法で、従業員の勤務態度をチェックする必要があります。
デメリット3:コミュニケーションが取りにくい
勤務場所がばらばらになるテレワークは、コミュニケーションを取りにくいのが問題です。本社に集まって仕事をしていれば対面で思う存分意見交換できますが、別々の場所にいるとコンタクトをとりにくいです。
コミュニケーションが十分に取れない環境だと、社員教育がしにくいのもデメリットだと言えるでしょう。
デメリット4:オンオフの切り替えが難しい
どこでも業務が行えるのがテレワークの良さですが、裏を返せばプライベートと仕事の線引きが難しくなると言えます。
特に在宅勤務は、生活の場で働くことになるのでオンオフ切り替えが難しいです。仕事のやめ時が分からない社員は、長時間労働で健康を害するかもしれません。それに、自宅だとやる気が出ずにストレスを抱える人もいます。
テレワークを導入する際には、従業員側の負担も考慮しましょう。
3.テレワーク導入時の留意点
次は、テレワークを導入する時に気を付けることについて考えていきます。
テレワークを開始する際には、作業環境の構築が必須です。自宅にWiFiがない従業員には、社が契約したポケットWiFiを貸し出すなど、業務をスムーズに行うための準備をしないといけません。
それに、テレワークで使用するパソコンの情報セキュリティ対策を行うことも重要です。ウイルス対策ソフトを用いる等、安全にテレワークが行える環境を用意します。
デメリットである労務管理の難しさへの対策としては、勤務時間や残業の管理方法を決めておく必要があります。
例えば、在宅での業務スタート時と終了時に上司にメール報告をするルールにすれば、出退勤時間を把握できます。
残業申請もメールで申請・承認する決まりにするなど、離れていても管理できる方法を取り入れましょう。効率的に管理したいなら、労務管理を自動化できる労務管理システムなどを導入するのがおすすめです。
そして、社員の評価方法についても導入前に十分考えてください。働き具合が見えない状態でも公平に正しく評価できるよう、途中段階での成果物を提出させたり、定期的な面談を行ったりして仕事への意欲を把握する仕組み作りをしましょう。
コミュニケーションの取りにくさや教育のしづらさを解消するためには、コミュニケーションツールの活用が効果的です。ビジネスチャットツールやビデオ通話アプリを導入すれば、遠隔でも社員同士が話しやすく新人教育が行える環境が構築できます。
4.まとめ
働き方の多様化を認めるテレワークは、今後さらに必要性が増すと考えられます。経営者と従業員の双方にメリットがあるので、自社の状況に合った導入方法を考えてみてください。
忘れてはならないポイントは、十分な準備をしてからテレワークを開始することです。事前準備として必要なことは、通信インフラの整備、セキュリティ対策、労務管理に関するルール作り、評価方法の見直し、コミュニケーションツールの導入など。
テレワーク開始後にも新たな課題が出てくると思うので、適宜改善を繰り返して安心安全に働ける環境を整えましょう。
医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。