制度融資とは、都道府県や市町村等の地方自治体が経済政策支援のひとつとして設けた制度。佐賀県中小企業金融制度は、佐賀県内で事業を営む中小企業者を対象とする融資制度です。
今回は、佐賀県中小企業金融制度の概要を説明し、いくつかのコースを取り上げて融資条件を詳しく解説します。
佐賀県中小企業金融制度の特徴は、一般的な金融機関での融資よりも事業者の負担が軽くなるよう配慮されていること。資金調達に関する悩みがある方は、融資対象に該当するか確認しましょう。
1.佐賀県中小企業金融制度とは
佐賀県中小企業金融制度とは、県と金融機関、信用保証協会が連携して行っている中小企業者向けの融資制度です。
県が金融機関に一定額の資金を預託し、中小企業者は金融機関を通じて融資を受ける仕組みで、信用保証協会が公的な保証人になります。
万が一、金融機関への返済が滞ったら信用保証協会が代位弁済し、中小企業者は信用保証協会へ借入金を返済します。
金融機関からの信用力が低い中小企業だと、貸し倒れリスクを警戒されて融資を受けられないことが多々ありますが、佐賀県中小企業金融制度を利用すれば、「信用保証協会の保証がつけば融資OK」と判断される可能性があります。
ただし、以下の表の「資本の額または出資の総額」もしくは「従業員の数」のいずれかに当てはまる企業のみが対象です。
業種 | 資本の額または出資の総額 | 従業員の数 |
製造業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
※従業員1人の個人商店も中小企業者に含む
※NPO法人も利用可能
※ゴム製品製造業、情報処理サービス業、ソフトウエア業、旅館業は別基準があるので要問い合わせ
▼問い合わせ先▼
産業労働部 産業政策課
電話:0952-25-7182
ファックス:0952-25-7270
sangyouseisaku@pref.saga.lg.jp
佐賀県中小企業金融制度の窓口は商工会議所や商工会です。一覧表に掲載されている場所で申込み手続きを行いましょう。
佐賀県中小企業金融制度の窓口一覧https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00327111/3_27111_169388_up_xv478ztm.pdf
2.佐賀県中小企業金融制度の概要
佐賀県中小企業金融制度には貸付対象者を限定しない「一般資金」と、貸付対象者に細かい条件がある「特別資金」があります。
「一般資金」の概要は以下の通りです。
融資限度額 | 貸付期間 | 利率/保証料率 | |
中小企業振興貸付 | 2,000~4,000万円 | 5~10年 | 年1.8%/年1.35%以内 |
短期運転資金 | 500万円 | 1年 | 年1.2%/年1.35%以内 |
小規模事業貸付 | 2,000万円 | 7~10年 | 年1.3%/年1.35%以内 |
「特別貸付」の概要はこちらです。
融資限度額 | 貸付期間 | 利率/保証料率 | |
さが創生貸付 | 2,000~8,000万円 | 7~10年 | 年1.3%/年0.60%以内 |
経営強化貸付 | 2,000~1億円 | 5~10年 | 年1.3%/年1.35%以内 |
経営安定化貸付 | 3,000~8,000万円 | 10~15年 | 年1.3%/年1.35%以内 |
これらの中からいくつかをピックアップして詳しく説明します。
(1)さが創生貸付(創業・新事業展開等資金)
さが創生貸付(創業・新事業展開等資金)は「特別貸付」の一種。これから事業を立ち上げる人や創業して間もない中小企業者が対象で、『独立・創業』『新事業展開等(新事業活動促進・事業転換)』の2種類です。
『独立・創業』は、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
・事業を営んでいない個人で1ヶ月以内に始める事業の具体的な計画がある
・事業を営んでいない個人で2ヶ月以内に設立する会社の具体的な計画がある
・いま営んでいる事業を継続して実施しつつ新たに設立する会社の具体的な計画がある
・事業を開始、または会社を設立した日から5年以内の個人や会社
※行政庁の許認可等を必要とする事業の場合は許認可等を得ていることが条件
融資限度額 | 貸付期間(措置) | 利率 | 保証料率 | |
設備 | 2,000万円 | 10年(2年) | 年1.3% | 年0.00% |
運転 | 2,000万円 | 10年(2年) | 年1.3% | 年0.30%以内 |
『新事業展開等(新事業活動促進・事業転換)』は、貸付条件として以下のすべてを満たす必要があります。
・客観的に事業を行っていることが明らかである
・県内に住んでいるか県内に事業所がある
・行政庁の許認可等を必要とする事業の場合は許認可等を得ている
・次のどれかに該当する
A:行政庁から承認を受けた経営革新計画、または認定を受けた異分野連携新事業分野開拓計画に基づいて事業を行っている
※経営革新計画の詳細https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/pamphlet/2019/download/190301kakushingb.pdf
※異分野連携新事業分野開拓計画の詳細
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shinpou/2020/201106bunya.html
B:県が「地域産業資源活用事業の促進に関する基本的な構想」で特定した地域産業資源 に関する新製品や新サービスの事業化に取り組んでいる
※地域産業資源活用事業の促進に関する基本的な構想の詳細
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00327241/3_27241_2_41saga.pdf
C:農林漁業者と連携し、互いの経営資源を有効に活用することにより新製品や新サービスの事業化に取り組んでいる
D:佐賀県トライアル発注事業で選定された新製品や新サービスの事業化に取り組んでいる
※佐賀県トライアル発注事業の詳細
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00326973/index.html
E:下請け中小企業振興法により認定を受けた計画に基づく事業に取り組んでいる
F:県事業「事業継承円滑化支援事業」等を活用し知的資産経営報告書等を作成して、新規事業に取り組んでいる
※事業継承円滑化支援事業の問い合わせ先
県経営支援課経営担当(0952-25-7182)
G:IOT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、フィンテック等を活用して、新事業活動に取り組んでいる
H:その他、新規性・独創性のある新製品や新サービスの事業化に取り組んでいる
I:経済環境の変化または新事業者の事業活動の変化に伴い、事業転換または新分野進出を行う
J:1年以上県内で事業を営んでいて自らの事業を継続して実施しつつ、新たに県内で異業種を営むために会社を設立し、事業開始後1年未満である
融資限度額 | 貸付期間(措置) | 利率 | 保証料率 | |
設備 | 5,000万円(運転と合わせて) | 10年(2年) | 年1.3% | 年0.00% |
運転 | 2,000万円 | 10年(2年) | 年1.3% | 年0.30%以内 |
借換 | 8,000万円
(設備・運転と合わせて) |
10年(2年) | 年1.3% | 年0.60%以内 |
『独立・創業』『新事業展開等(新事業活動促進・事業転換)』どちらも、設備資金は土地、建物、設備を取得する際に使用できますが、土地のみを取得するケースだと利用不可なので気を付けてください。
(2)中小企業振興貸付
中小企業振興貸付は「一般資金」の一種で、対象者への要件が少ないのが特徴です。以下のすべての要件を満たしていれば融資が受けられます。
・客観的に事業を行っていることが明らかである
・県内に住んでいるか県内に事業所がある
・行政庁の許認可等を必要とする事業の場合は許認可等を得ている
融資限度額 | 貸付期間(措置) | 利率 | 保証料率 | |
設備 | 4,000万円(運転と合わせて) | 10年(1年) | 年1.8% | 年1.35%以内 |
運転 | 2,000万円 | 5年(6ヶ月) | 年1.8% | 年1.35%以内 |
設備資金は、土地、建物、設備の取得費が対象ですが、土地のみの場合は対象外です。
運転資金は、「小規模企業者」に対する制限があるので注意が必要です。小規模企業者は、この貸付や中小企業特別対策資金、小規模企業者導入資金による設備資金の借入や設備貸与に伴って増加した運転資金にしか利用できません。
小規模企業者とは?
次のいずれかに当てはまる個人や会社等が小規模企業者です
・常用従業員数が20人(商業・サービス業は5人だが、宿泊業・娯楽業は20人)以下 ・事業協同小組合 ・組合員数20人以下の企業組合 ・常用従業員数が20人以下の協業組合、医業を行う法人 |
小規模企業者向けの融資なら、次に紹介する小規模事業貸付(一般資金)のほうが制限が少なく利率も低いです。
(3)小規模事業貸付(一般資金)
小規模事業貸付(一般資金)は、以下の3点を満たす小規模企業者のみが対象です。
・客観的に事業を行っていることが明らかである
・県内に住んでいるか県内に事業所がある
・行政庁の許認可等を必要とする事業の場合は許認可等を得ている
融資限度額 | 貸付期間(措置) | 利率 | 保証料率 | |
設備 | 2,000万円 | 10年(1年) | 年1.3% | 年1.35%以内 |
運転 | 2,000万円 | 7年(6ヶ月) | 年1.3% | 年1.35%以内 |
小規模事業貸付(一般資金)は設備資金に関する制限だけです。設備資金は土地、建物、設備の取得費が対象ですが、土地のみだと利用できません。
3.まとめ
佐賀県中小企業金融制度は、「一般資金」よりも「特別資金」のほうが融資条件が優遇されているコースが多いです。まずは、「特別資金」の対象に当てはまるか確認しましょう。
そして、融資を受ける際には提出書類の作成もしなければなりません。特に「特別資金」を利用する場合には提出書類が多い傾向があります。
おすすめなのは、融資に詳しい専門家の力を借りること。資金調達のプロに相談して、申し込み手続きをスムーズに進めましょう。
医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。