中小企業が兵庫県内で受けられる融資と言うと、県が実施している制度融資を思いつく人も多いのではないでしょうか。
兵庫県中小企業融資制度(制度融資)は、県内で資金繰りに困っている事業者のための融資制度です。長期間融資が受けられるなど、融資を受ける側にとってメリットのある制度ですが、用意されている制度の種類が多すぎて、どれを選んだら良いか迷う人も少なくありません。
そこで本記事では、兵庫県中小企業融資制度の利用を検討している事業者を対象に、融資対象の要件から主な融資制度の種類まで、わかりやすく解説します。
1. 兵庫県中小企業融資制度(制度融資)とは
兵庫県中小企業融資制度は、県と兵庫県信用保証協会、そして金融機関が連携して実施している、中小企業者向けの融資制度です。
三者が連携することで、通常の融資よりも利用しやすいという点が、制度の大きな特長でしょう。例えば、兵庫県信用保証協会が保証人となって、金融機関から借り入れできるようサポートしますので、融資を受ける人は、保証人を探す必要がなくなります。
その他にも、低金利や固定金利、長期融資といった特徴があります。これは、県が融資条件を設定し、取扱金融機関に対して融資原資の一部を預け入れる仕組みを、制度に導入することで実現したと言えるでしょう。
兵庫県中小企業融資制度が対象としているのは、原則として以下の要件を満たしている「中小企業者」と「組合等」です。
・県内に事業所を構えている
・兵庫県信用保証協会が、保証対象としている業種を経営している
なお、融資対象者にはNPO法人も含まれています。
「中小企業者」については、以下の定義を参考にしてください。融資対象者は、従業員数または資本金のどちらかに該当していることが要件です。
兵庫県中小企業融資制度が対象としている業種は、以下のとおりです。
・引用:制度の概要・申し込みの流れ(兵庫県)
https://web.pref.hyogo.lg.jp/sr08/seidogaiyou.html
2.兵庫県中小企業融資制度(制度融資)の概要
兵庫県中小企業融資制度には、資金調達を必要としている中小企業の要望に対応するため、さまざまな種類の融資制度が設定されています。主なものについて、対象者や融資限度額、融資期間などをまとめました。
(1) 新規開業貸付
兵庫県内で、新たに事業をスタートさせる事業者を対象にした融資制度です。
新規開業貸付の融資対象者は、以下のように設定されています。
①具体的な事業計画を持ち、1ヵ月以内に開業する予定のある人、または2ヵ月以内に会社を設立し、兵庫県内で事業を開始しようとする人
②①に該当し、かつ借入金額が2,000万円以上となる場合、超過分に相当する以上の自己資金を確保している人
③開業してから1年未満の人
④①または②に該当する外国人で、在留資格や特定の資格取得(経営・管理)が見込まれている人
⑤県内で、新たに子会社を設立する人
新規開業貸付の融資期間は10年以内で、3,500万円まで借り入れ可能です。第三者保証人は必要としません。
(2) 再挑戦貸付
「再挑戦貸付」は、廃業したものの、再び開業を目指している人向けの融資制度です。
この制度が対象としているのは、廃業してから5年以内に再起業を目指している人で、以下の要件を満たす必要があります。
①1ヵ月以内に開業予定のある人
②2ヵ月以内に会社を設立して、県内で事業を始める予定のある人
③再起業してから6ヵ月以上経過していない人
融資限度額は2,000万円以内で、最長10年間利用可能です。資金使途は、運転資金または設備資金で、新しく会社を設立する際に必要な、「株式取得資金」は対象外です。
再挑戦貸付は、担保も第三者保証人も必要とせず、「新規開業貸付」とあわせて融資を受けることもできます。
(3) 長期資金
長期にわたり、一般事業資金を融資する制度です。
長期資金には、「一般運転」と「組合転貸・組合共同事業」の2種類あります。「一般運転」は、県内で事業を営む中小企業者を対象に、5,000万円を上限に融資します(融資期間は最長10年)。「組合転貸・組合共同事業」は、組合等の組合員や、関連する組合などが対象で、1組合員あたり最大5,000万円、1組合あたり最大1億円の融資限度額を設定しています(融資期間は最長10年)。どちらも第三者保証人は、原則として必要ありません。
「一般運転」は、原則として運転資金のみの融資ですが、限度額内で設備資金を調達したい場合は、「運動資金との一本化」として融資可能です。
(4) 短期資金
「短期資金」は、短期間の融資を希望する人向けの融資制度です。融資限度額は3,000万円で、融資期間は6ヵ月以内、または1年以内に設定されています。
短期資金には、「一般・組合転貸」と「貿易貸付」の2種類用意されていて、前者は県内で事業を展開している人、または組合等の組合員が対象で、後者の融資対象者は、以下のとおりです。
・引用:短期資金(貿易貸付)のご案内
https://web.pref.hyogo.lg.jp/sr08/documents/30tankiboueki.pdf
貿易貸付の資金使途は、輸出と輸入において、それぞれ細かく設定されています。前者には、荷物を船に積むまでにかかる「前渡資金」のほか、「製造資金」や「集荷貸金」が含まれます。後者の資金使途は、「一覧払輸入手形」または「ユーザンス手形」を決済するための資金や、「信用状開設保証金」など、輸入時に必要となる保証金を支払うための資金です。
(5) 小規模資金
小規模事業者を対象とした、融資制度です。ここで言う「小規模事業者」とは、「常時雇用者20人以下(旅館や娯楽業を除くサービス業・商業は、5人以下)の中小企業者または組合」のことを言います。
この小規模企業資金には、「小規模無担保貸付」「無担保・無保証人貸付」「特別小規模貸付」と、三つの種類があります。
- 小規模無担保貸付
兵庫県内で事業を展開している小規模事業者のうち、小規模無担保貸付の申し込み額と、保証協会の保証残高合計が4,500万円を超えない人が、融資対象者です。県外で事業を展開していて、県内でも同じ事業を営む予定の人も、融資対象に含まれます。融資限度額は2,500万円で、最長7年間利用できます。
②無担保・無保証人貸付
県内で同じ事業を1年以上続けている小規模事業者で、
・保証協会の保証残高が2,000万円以下である
・保証人を立てるのが困難である
・支払い義務のある税金は完納済みである
という要件を満たしている人を対象にしています。融資限度額は2,000万円以内で、融資期間は最長7年です。
③特別小規模貸付
県内で事業を展開している、または、県外で展開している事業を、県内でも営もうと予定している小規模事業者が対象です。2,000万円を上限に、最長7年間利用できます。
(6) 神戸市独自資金
神戸市が実施している融資制度です。市内で事業を展開する小規模事業者が対象で、ほかの融資制度とあわせて利用できます。
神戸市独自資金には、「小規模無担保貸付(こうべ小規模)」「無担保・無保証人貸付(こうべ無担保)」「特別小規模貸付(こうべおうえん)」「こうべ若者支援貸付」と4種類あります。いずれも融資限度額は400万円までで、融資期間は7年間と設定されています。
(7) 新型コロナウイルス感染症対応資金
「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」「危機関連保証」の、いずれかの認定を受けた中小企業者を対象にした融資制度です。セーフティネット保証と危機関連保証は、いずれも「中小企業信用保険法」で定められている要因(災害など)によって、事業の継続が困難になった中小企業を支援する保証制度です。各保証制度の詳細は、中小企業庁ホームページで確認できます。
・セーフティネット保証4号
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_4gou.htm
・セーフティネット保証5号
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.htm
・危機関連保証
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_crisis.htm
従来の信用保証付融資の借換資金としても利用でき、借換後は、「3年間無利子」など、新型コロナウイルス感染症対応資金が設定している条件が適用されます。
新型コロナウイルス感染症対応資金の融資限度額は上限6,000万円で、最長10年間利用可能です。
(8) 新型コロナウイルス感染症保証料応援貸付
新型コロナウイルス感染症対応資金と同じく、融資対象者は、「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」「危機関連保証」いずれかの認定を受けた中小企業者です。新型コロナウイルス感染症保証料応援貸付の融資限度額は5,000万円で、融資期間は最長10年間。信用保証料は兵庫県が全額負担してくれます。
(9) 新型コロナウイルス対策貸付
新型コロナウイルス感染症が原因で、直近1ヶ月の売上が前年同月と比べて5%減少(セーフティネット保証4号の場合は20%以上減少)した中小企業者向けの融資制度です。
開業して1年未満の人でも、以下のいずれかの要件に該当する場合は、融資を受けられます。
①最近1ヵ月の売上が、最近1ヶ月を含む3ヶ月間の平均売上高よりも、5%以上減った人
②最近1ヶ月の売上が、令和元年12月のそれと比べて5%以上減り、今後2ヶ月(合計3ヵ月)の売上も、令和元年12月の3倍にあたる売上高と比べて5%以上減ると見込まれている人
③最近1ヶ月の売上が、令和元年10~12月の平均売上高と比べて5%以上減り、今後2ヶ月(合計3ヵ月)の売上も、令和元年10~12月のそれと比べて5%以上減ると見込まれてる人
④①~③に該当しなくても、セーフティネット保証4号・5号または危険関連保証の認定を受けた人
新型コロナウイルス対策貸付の融資限度額は2億8,000万円で、融資期間は10年間と設定されています。
(10) 新型コロナウイルス危機対応貸付
新型コロナウイルス感染症の影響で、直近1ヶ月の売上が前年同月と比べて15%以上減少し、今後2ヶ月(合計3ヵ月)の売上も、前年同期と比べて15%以上減少する可能性のある、「危機関連保証」の認定を受けている人に対する融資制度です。
新型コロナウイルス危機対応貸付は、2億8,000万円を上限に融資し、最長10年間利用できます。
(11) 借換等貸付(新型コロナウイルス対策)
新型コロナウイルス感染症によって経営が悪化した中小企業者の中で、最近1ヶ月と前年同月を比べ、前者の売上が5%以上減少し、さらに、以下の要件のいずれかに該当する人が融資対象者です。
①すでに利用している、兵庫県中小企業融資制度の借入残高がある人
②神戸市中小企業融資制度を平成29年3月31日以前に利用し、その借入残高がある人
③①または②に加えて、兵庫県信用保証協会保証付融資の借入残高がある人(ただし、借入残高の2分の1以上が、①または②の融資であることが要件です)
④借換を実施することによって経営状態が改善し、返済の見込みがある人
借換等貸付(新型コロナウイルス対策)の融資限度額は2億8,000万円で、融資期間は最長10年間と決められています。
(12) 経営活性化資金(新型コロナウイルス対策)
新型コロナウイルス感染症が原因で経営が悪化し、早急に運転資金を必要とする人を対象とした融資制度です。対象者の具体的な要件は、以下のとおりです。
①兵庫県内で1年以上同じ事業を展開し、直近1ヶ月の売上が、前年同月のそれよりも5%以上減った人
②取扱金融機関との間で、与信取引を1年以上続けている人
③青色申告(個人事業主)、または税務署受付印の入った直近決算書を提出できる人
経営活性化資金(新型コロナウイルス対策)は、担保も第三者保証人も必要としません。さらに、融資審査もスピーディーに行なわれます。融資限度額は5,000万円で、10年間の融資期間が設定されています。
3.まとめ
兵庫県中小企業融資制度の概要や制度の種類、融資対象者などについて解説しました。
この融資制度は、できるだけ多くの中小企業者が融資を受け、安定した経営を継続できることを目的としています。資金調達が必要な場合は、融資を検討してみてはいかがでしょうか。
兵庫県中小企業融資制度には、複数の融資制度が用意されていて、条件にあったものを選ぶ必要があります。どれに申し込めば良いか決めづらい場合は、資金調達の専門家に相談してみましょう。それが、資金調達をスムーズに行なうことに繋がります。
英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。