個人事業主にとって、「この費用は経費で落とせるのだろうか?」というのは、日々の経理や確定申告を行う際に頭を悩ます問題です。この記事では、個人事業を営む上で発生するさまざまな費用のうち、どんな費用が経費になり、どんな費用が経費にならないのか、また経費に計上するときの留意点をわかりやすく解説します。ぜひ、参考にしてみてください。
1.個人事業主とは
株式会社などの法人を設立せずに、個人で事業を営んでいる人のことを「個人事業主」といいます。会社に雇われてお給料をもらう会社員と異なり、個人事業主は企業や個人と直接取引をすることで収入を得ます。
個人事業主を専業でしている方は、合計所得(収入―必要経費)が48万円を超える場合、必ず確定申告を行わなくてはなりません(2020年分より)。青色申告、白色申告どちらで行う場合も、帳簿の作成義務があり、日々の収入や支出などを勘定科目に仕分けして記帳していくことになります。つまり、所得額や税額の計算や、毎日の経理業務を行っていく上でも、経費となる費用を知っておくことは重要なポイントなのです。
2.個人事業主の経費
事業で発生するさまざまな費用の中で、一体どんな費用が経費として認められるのでしょうか。経費になるもの、ならないものに分けて、いくつかご紹介します。
(1)個人事業主の経費になるもの
基本的に経費は、「事業を行うにあたり必要な費用」で、以下のように直接的に事業に関わる費用と、間接的に売上や新規顧客獲得といった事業につながる費用に分けられます。
事業に関連する費用
・消耗品費
文具やコピー用紙といった事務用品、工具など
・荷造運賃
販売している商品の送料、梱包に使う包装紙代など
・水道光熱費
事業を行う場所の水道料金、電気料金、ガス料金など
・地代家賃
事務所の家賃、コワーキングスペースの利用料など
・旅費交通費
業務上の出張などでかかる電車代、タクシー代、宿泊代、駐車料金など
・通信費
電話代、インターネット接続にかかる料金、切手代など
・給料賃金
従業員やアルバイトへ支払う賃金など
・福利厚生費
従業員やその家族に対する祝い金や見舞金、慰安旅行費用など
事業につながる費用
・接待交際費
取引先や顧客などに対する接待費用や送迎代、慶弔費、お中元やお歳暮といった贈答品代など
・研修費
事業に必要な知識やスキル向上、資格取得などのために参加したセミナーの受講料など
(2)個人事業主の経費にならないもの
一方で、事業に関連しない以下のような費用は、経費に計上することはできません。
個人事業主は、自宅を事務所として使用していたり、プライベートの財布から仕事に必要なお金を出すことがあったりするケースも多く、事業と私生活の境目が分かりにくい面があります。ですが、あくまでも個人や家事に関連する出費は、経費と認められないので注意しましょう。
・所得税や住民税など
事業に関わらず個人に対して納税義務のある所得税や住民税は、経費にはなりません。税金の中でも、個人事業税、登録免許税、印紙税、(事業で使用するものに対する)固定資産税や自動車税といった事業に関わる税金は、「租税公課」という勘定科目を使って経費にすることができます。
・国民年金や健康保険料など
社会保険料は、個人にかかる支出のため経費になりませんが、確定申告で「社会保険料控除」として申告することができます。
・家庭のために使用した費用
自宅を事務所兼用にしている場合など、家庭で使った分の水道光熱費、電話代、家賃といった支出は経費にすることができません。
事業での使用分を経費にするときは、家事按分(かじあんぶん)といって、事務所として占有している面積や作業時間の実態に応じて費用を振り分けます。たとえば事務所スペースの面積と自宅スペースの面積の割合が3:7であれば、家賃の3割を経費として計上します。
3.経費で落とすときの留意点
では、実際に費用を経費にする場合、どんなことに気をつければよいのでしょうか。特に知っておきたい留意点を2つご紹介します。
領収書やレシートなどを必ずもらい、保管しておく
経費として認められるためには、支出したときの領収書やレシート、ウェブ上の取引画面をプリントアウトしたものといった、「いつ、どんなものに、いくら支出したのか」を証明できる証拠資料が欠かせません。
取引先との打ち合わせでかかったコーヒー代など、領収書だけでは経費と判断しづらいものは、「誰と、どんな目的で」支出したのかを領収書余白へメモします。慶弔費など領収書が出ない出費は、日付、支払先、金額、支払い内容といったことを具体的に記入した出金伝票を作成しておきましょう。
事業目的と、それ以外の出費を分けて管理する
前項でも触れたように、経費は事業に関わる支出だけです。日頃から曖昧にならないように、銀行口座やクレジットカードを仕事用、プライベート用でそれぞれ作成するなど、事業の出費とそれ以外の出費を分けて管理しましょう。
家賃や水道光熱費、自動車関連の費用に適用される家事按分には、法的なルールや明確な按分基準がありません。しかし、倫理的に説明できる方法で按分された費用でなければ、経費として認められない可能性もあります。経費計上する際は、その点に十分留意するようにしましょう。
4.まとめ
個人事業主の経費になる費用、ならない費用についてご紹介しました。経費にできる費用をもれなく計上していくことで、節税にもつながります。今一度、ご自身の事業にかかっている費用を見直してみてはいかがでしょうか。もし、ご自身ではよくわからない、プロに相談したいというときは、税理士などの専門家にアドバイスを求めてみるのも有効な手段です。
金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。
お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。