経費について/経費の基礎を解説

経費はどう処理したら良いのか、悩む人も多いのではないでしょうか。特に脱サラから独立開業し、初めて確定申告に取り組むという場合は、不安を感じるかもしれません。

 

経理処理の知識が曖昧で、確定申告に不安を抱えている人が経費を適切に処理するには、判断基準など経費の基本について理解を深めることが一番です。本記事では、経費の分け方やメリット・デメリットなど、経費の基礎知識について解説します。

 

1 経費になるものとならないもの

「経費」とは、事業を行なう際に必要となる費用のことを言います。事業を展開する上でさまざまな業務がありますが、経費になるかどうかを決める目安となるのが、「経費の判断基準」です。この章では、経費の判断基準を用いて、「経費になるもの」と「経費にならないもの」がどう分けられるかについて説明します。

 

(1)     経費になるもの

経費かどうかを決める判断基準は、「事業の売上に結びつく費用かどうか」です。会社の目的は利益を得ることで、そのために不可欠な費用(経費)は必ず発生します。経営者は、売上から経費を差し引き、利益を正しく出す必要があります。

具体的に、どのようなものが経費と見なされるのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。

 

・消耗品代

コピー用紙やホワイトボード、ペン、ノートといった事務用品やデスクや椅子、キャビネットなどの消耗品は、会社の経営に最低限必要です。業務を円滑に実施できなければ、売上げを上げることはできませんので、消耗品は経費となります。

 

・交通費

営業は、売上に結びつく事業活動の一つです。得意先を訪れる際に利用した電車代などは、経費と見なされます。自動車で移動する場合は、ガソリン代を交通費とします。

 

・従業員の給料

会社の規模にもよりますが、人を雇わなくては業務が十分にできず、売上に影響が出ます。従業員を雇った場合、経費の対象となるのは、給料やボーナスなど、雇用者に対して支払ったお金です。

 

・取引先との飲食代

取引先をもてなしたり、贈り物をしたりする時に発生する支出は、仕事に関係していますので、経費として取り扱うことが可能です。

 

このように、経費になるものは、事業に関連した支出であることがわかります。「売上に結びつく費用かどうか」の判断基準を持つことで、経費の見極めが容易になるのではないでしょうか。

 

(2)  経費にならないもの

経費にならないものには、事業に関係ないものや一部の税金があてはまります。経費として取り扱えないものについて、具体例を挙げて説明します。

 

・事業と無関係の費用

個人的な知り合いとの飲食代や、個人で使用する筆記用具などは、経費となりません。また、経営者が健康維持に通うジムの利用料金や人間ドックの費用も、事業に関係ない費用と見なされます。

 

・住民税などの税金

所得から支払う義務のある税金は、経費として取り扱えません。対象となる税金には、住民税や所得税、法人税などがあります。また、延滞税など税務署から課された税金も同じです。

 

このように、仕事に関係のない支出や税金は、経費にはなりません。経費としてうっかり計上しないよう注意が必要です。

 

2 経費で落とすことのメリットとデメリット

「経費で落とす」とは、「経費として計上する」という意味になります。ここでは、経費で落とすことのメリットとデメリットについて説明します。

 

(1)     経費で落とすことのメリット

経費に計上することの最大のメリットは、節税(適正な納税)になるということです。税金は、利益に対して課されます。もし、売上から経費を差し引かずにそのまま『利益』としてしまうと、この『利益』が課税対象になります。つまり、経費の過小計上は過大な利益を招き、必要以上に税金を支払うことになるのです。

 

例えば、利益に対して20%の税金が課されるとしましょう。経費ゼロの場合、100万円の利益に対して20万円が税金となります。しかし、経費が30万円あったとすると、100万円-30万円=70万円が利益となり、税金は14万円です。

 

このように、正しく経費を計上することによって、過大な利益計上がなくなり、その結果節税に繋がります。

 

(2)  経費で落とすことのデメリット

「経費で落とす」ことのデメリットは、赤字体質に陥るリスクと脱税を疑われる可能性があることです。

経費と言っても、実際はお金が出ていくことに変わりありません。経費は節税に繋がりますが、「事業との関連性がグレーなものまで、とにかく落とせるものは落とす」という姿勢では、利益が出ずに赤字体質になってしまうリスクが出てしまいます。

 

また、自分の都合で経費で落とせると解釈してしまうと、経費では落とせないものまで計上する恐れもあります。特に接待交際費は、外食代、ゴルフ代、接待後のタクシー代、慶弔見舞金など対象範囲が幅広く、事業と関係のない費用まで経費で落とす可能性が高くなるため注意が必要です。税務署は、接待交際費について厳しくチェックする傾向にあり、脱税が疑われる可能性も十分考えられます。

 

脱税の疑惑をかけられてしまえば、事業全体の信用を傷つけてしまうことになるでしょう。経費として計上する際は、事業に関連性があるかどうか正しく判断することが望まれます。

 

3 主な経費の勘定科目

勘定科目とは、費用を帳簿に記載する際に設けられた、「費用の区分」のことです。さまざまな種類の支出を適切に記帳するには、どの勘定科目に該当するかを知る必要があります。ここでは、主な経費の勘定科目について説明します。

 

・租税公課

租税(国税や地方税)や、公的に負担したお金(公共団体に納める会費など)のことです。経費の対象となる租税公課は、事業の運営に関するもので、主なものに個人事業税や不動産取得税、固定資産税、自動車税(軽自動車税)、印紙税などがあります。

 

・福利厚生費

福利厚生費は、従業員に対する支出が対象です。従業員の健康診断にかかった料金や、慰安旅行費などが含まれます。

 

・接待交際費

取引先や仕入先に対する接待など、仕事上必要なつきあいに支払う費用のことです。「接待費」や「交際費」の他、「機密費」なども含まれます。具体的には、取引先とのゴルフ代、飲食代、香典やお祝い金など多岐にわたります。

 

・旅費交通費

「旅費」と「交通費」をあわせた支出のことです。例えば、遠方へ出張した際に発生した飛行機代やホテルの宿泊代が、旅費交通費になります。旅費には、「宿泊費」の他に「出張手当」も含まれます。

 

・研修費

仕事上に必要な知識を得たり、学んだりする時にかかる費用が、「研修費」です。セミナー受講費や、イベント参加費用などが該当します。

 

上記に挙げたもの以外にも、勘定科目は数多くあります。どのような勘定科目があるか知りたい場合、厚生労働省が公開している一覧表が参考になるでしょう。

・参考:厚生労働省 勘定科目の説明(改正案)

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/houkoku/14beppyou.html

 

4 まとめ

本記事では、経費になるものとならないもの、経費で落とすことのメリットとデメリット、そして、主な経費の勘定科目について解説しました。

経費になる・ならないの判断基準は、事業の売上に結びつく費用かどうかです。この判断基準を知ることで、経費で落とせるかどうかが決めやすくなります。

実際に経費を処理する際、該当する勘定科目がわからず、判断に迷うことがあるかもしれません。その場合は、税理士に相談するなど、必要に応じて専門家のサポートを受けることをおすすめします。経費で落とすかどうか正確に判断して、正しい会計処理を目指しましょう。

 

執筆者:佐藤 世莉(さとう せり)

 

英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。