事業資金の融資を受ける場合、「担保」が必要となるケースがあります。「担保」はいろいろな所で見かける言葉ではあるものの、「実は、よくわからない」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、担保とは何か、なぜ担保が必要となるのか、担保を提供する際の留意点などをわかりやすく解説します。
1.担保とは
担保とは、契約を履行できなくなった際に生じる不利益を補うものとして、あらかじめ差し入れる物品などを指します。簡単に言うと、借り手(債務者)がお金を返せなくなってしまったとき、返済金の代わりに銀行などの貸し手(債権者)へ渡すものが担保です。担保には、「人的担保」と「物的担保」の2種類があります。
(1)人的担保
借り手ではない第三者の財産を担保に設定するものです。人的担保の代表的なものには、融資における「保証人」があります。銀行は、借り手が契約通りの返済をしない場合、保証人に借り手と同内容の契約履行(借金を返済すること)を求めることで、融資したお金を回収しようとします。
(2)物的担保
物や権利といった特定の財産を担保に設定するものです。物的担保の代表的なものには「質権」や「抵当権」があります。
●質権
貸し手が、借り手の物品や不動産、権利書などを融資が返済されるまで保管、占有し、万一返済できない場合にはそれらを売却するなどして、優先的に返済に充てることができる権利です。
●抵当権
貸したお金が返済されないときに、借り手の土地や建物といった不動産を、貸し手が売却して返済に充てることができる権利を指します。
2つはよく似ていますが、大きな違いは担保とするものを「貸し手が保管、占有できるかどうか」という点です。質権の場合、担保不動産などの法的な所有者は借り手のままですが、その不動産を占有するのは貸し手です。したがって貸し手は、融資の返済がされるまでの間、担保不動産を使用したり、使用によって収益を受けたりすることもできます。一方で抵当権の場合は、貸し手にそのような権利はなく、返済中もあくまでも保有者である借り手が担保不動産を占有します。
2.担保を提供する意義と留意点
融資制度によっては、担保不要で借り入れできるものもあります。では、融資で担保を提供する意義とは、何なのでしょうか。
銀行などの貸し手が、融資を行うにあたり重要視するのは、「貸し出したお金が無事にすべて返済されるか」ということです。そのために、事業の経営状況や将来性、信用力など借り手について詳しく事前審査をして、返済能力の有無を判断するわけです。
もし借り手が十分な担保を提供できれば、「万一のときでも返済できる」という借り手の信用力が補完されますから、貸し手にとっては貸し倒れるリスクが少なくなり、融資の審査が通りやすくなります。それだけでなく、より多額な融資や、長期間、低金利の借り入れが実現できる可能性も高まるでしょう。
なお、担保を提供する融資には、留意しておきたいこともあります。
●融資実行までに時間がかかる
たとえば不動産を担保に設定する場合、物件の調査をしたり、鑑定をしたりと担保の評価に時間を要します。金融機関で担保にどれくらいの価値があるのか算定した上で、審査の判断がされるため、融資額が手元に入るのはそのあとになります。すぐに資金を調達したい場合には注意が必要です。
●手数料などのコストがかかる
担保に抵当権を設定する場合、登録免許税がかかります。また、法務局で行う抵当権設定の手続きは司法書士に依頼するのが一般的なため、司法書士への手数料も考えておかなくてはなりません。たとえば2,000万円の融資を受ける際は、以下のような費用が発生します。
・登録免許税(借入額〔厳密には債権額〕×0.4%)→2,000万円×0.4%=80,000円
・司法書士への報酬→30,000〜100,000円程度
そのほか、必要書類の取得費用なども必要となります。あらかじめトータルでどのくらいのコストがかかるのか、計算しておいた方が安心です。
3.まとめ
「担保」について理解を深めていただけたでしょうか。今は融資を受ける予定がないという方も、今後事業を拡大したいときなど融資を検討する機会があるかもしれません。そんなとき、「担保とは何か」といった基礎的なことを知っておけば、金融機関へ相談するときにもスムーズに話が進められますよ。ぜひ今回ご紹介したことを、知識の一つに加えていただければと思います。
金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。
お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。