トライアル雇用助成金とは/労働力の確保に役立つ助成金

トライアル雇用助成金の名前は知っているものの、どのような支援金かわからない、という人も多いのではないでしょうか。

試験的に採用した求職者に対して支給されるトライアル雇用助成金は、適材を探している企業にとって、労働力の確保に役立つ支援金と言えます。

この記事では、トライアル雇用助成金の利用を検討している事業主向けに、受給要件や申請方法など、申請前に知っておきたいことについて、わかりやすく解説します。

 

 

1.     トライアル雇用助成金とは

「トライアル雇用助成金」とは、厚生労働省が実施している、雇用に関する支援金のひとつです。企業にとってトライアル雇用制度を利用するメリットは、コストを抑えつつ、求めている人材かどうか見極められる点と言えるでしょう。

「トライアル雇用」は、求職者と企業をマッチングさせることを目的とした制度です。この制度により、企業は興味のある人材を3ヶ月間試験的に雇い、適性などをチェックできるようになります。トライアル雇用助成金は、試験期間中の支援金として支払われます。

トライアル雇用は、通常ハローワークなどを介して実施されます。雇用の対象となるのは、スキルや知識などの面で職を得ることが難しいとされる人です。面接をして雇用を決めると、トライアル雇用開始となります。

トライアル雇用期間は原則3ヶ月で、その間に、企業は正式に雇うかどうか考える必要があります。期間終了後の採否は、雇用側の判断に委ねられていますので、企業にしてみれば、利用しやすい制度と言えるでしょう。

トライアル雇用助成金は、「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」に分けられます。次の章から、一般トライアルコースについて説明していきます。

 

 

2.     トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

一般トライアルコースには、助成金の受給について細かな規定があります。制度の利用を検討する際に知っておくべきことは、「受給要件」「受給金額」「申請方法」の3つです。それぞれ詳しく見てみましょう。

 

 

(1)     受給要件

厚生労働省のホームページには、同省が設定している一般トライアルコースの受給要件が掲載されています。一般トライアルコースの対象となるのは、ハローワークから紹介され、トライアル雇用を希望している求職者です。そして、以下に挙げる条件のいずれかを満たしている必要があります。

・転職や離職を繰り返している人(紹介日の前日から過去2年間に2回以上)

・紹介日の前日から1年以上離職している人

・前職を辞めた理由が妊娠、出産または育児で、紹介日の前日から1年以上安定した職に就いていない人

・55歳未満のニートやフリーター(紹介日の時点)

・就職の際に、特別な配慮を必要とする人(ホームレスや母子(父子)家庭の母(父)、生活困窮者など)

 

受給要件を満たしている求職者を雇った場合、企業は以下の条件を満たすことで、支援金を受け取ることが可能になります。

・原則3ヶ月間トライアル雇用として採用する

・1週間の所定労働時間は原則として30時間以上とする

 

このように、受給要件は細かく規定されています。規定外の求職者を採用したり、定められた労働時間を守らなかったりすると、支援金を受け取ることができなくなりますので、注意が必要です。

 

参考:厚生労働省 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html

 

(2)     受給金額

一般トライアルコースの月額受給金額は、労働者1人あたり最大4万円です。ただし、次の対象者については、月額受給金額が最大5万円になります。

・母子家庭の母

・父子家庭の父

・若者雇用促進法に基づく認定事業主(ユースエール認定企業)に、トライアル雇用された35歳未満の労働者

 

助成金の受給期間は、最長3ヶ月間と決められています。ただし、次のように就労予定日数と、実際に働いた日数が異なるケースに対しても、満額ではありませんが支払われます。

・トライアル雇用満期(3ヶ月)前に対象者が離職した

・トライアル雇用満期前に、対象者の雇用形態を常用雇用に切り替えた

・個人の都合で支給対象者が休暇を取った

・事業主が自主都合で休業した

 

上記の理由などにより、実際に働いた日数が予定日数の75%以下であった場合、支給額は、「支給対象者が1ヶ月間に就労した日数」を「支給対象者が当該1ヶ月間に就労を予定していた日数」で割って算出されます。例えば月額最大4万円支給される予定だった対象者で、実際に働いた日数が予定日数の45%だった場合、月額2万円まで減額されます。

 

参考:厚生労働省 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html

 

このように、就労日数が予定日数に満たない場合は減額となります。しかし、やむにやまれぬ事情で解雇の決断をしたり、休業を余儀なくされたりした場合でも、日割り計算で助成金が支払われますので、コスト面で企業の負担は軽減されるのではないでしょうか。

 

(3)     申請方法

一般トライアルコースに申請するには、予めハローワークに「トライアル雇用求人」を出しておく必要があります。必要な書類を揃えて申請するのは、求職者をトライアル雇用で雇ってからです。

申請に必要な書類には、大きく分けて「トライアル雇用実施計画書様式」と「結果報告書兼支給申請書様式」があります。ただし、新型コロナウイルスの影響でトライアル雇用期間に影響が出た場合の提出書類は、「新型コロナ特例様式」になりますので注意しましょう。これらの書類はすべて、厚生労働省のホームページからダウンロード可能です。

 

参考:トライアル雇用助成金の申請様式ダウンロード https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou_dl.html

 

採用を決めたら、求職者を紹介したハローワークに、「実施計画書」を提出します。提出期限は、トライアル雇用がスタートした日から2週間以内です。実施計画書を提出する際、労働条件の確認が可能な書類(雇用契約書など)の添付が必要になります。

雇用開始から3ヶ月間は、トライアル雇用期間です。満期を迎え、常用雇用に切り替えた場合は、「トライアル雇用助成金支給申請書」を作成します。提出期限は、移行した翌日から2ヶ月以内です。労働者がトライアル雇用期間中に離職するなど、期間を変更する必要が出た場合は、速やかにハローワークに連絡してください。

各都道府県のハローワークや労働局では、申請時の問い合わせに対応しています。申請書類の作成方法や必要な添付資料などについて不明な点がある場合は、最寄りのハローワークに問い合わせると良いでしょう。

 

 

3.     トライアル雇用助成金の留意点

トライアル雇用助成金は、支払われるまでに時間がかかります。助成金の支給は、通常トライアル雇用期間後になります。支給されるまでに時間がかかるのは、助成金の受給要件を満たしているかどうかなどの、審査がおこなわれるためです。助成金は月額で決められているため、毎月振り込まれると考えるかもしれません。しかし、実際には審査が通ってから、3ヶ月分まとめて支払われる場合がほとんどです。

一般トライアルコースを利用する事業主は、制度を利用するための条件を満たしているかどうか、確認しておく必要があります。厚生労働省は、一般トライアルコースの対象となる事業主について、28項目の要件を設定し、すべて満たした事業主のみ利用を認めています。

たとえば、過去6か月に事業主の都合で雇用保険被保険者を解雇した実績のある事業主は制度が利用できないなど、うっかりすると対象外になってしまう項目も多くあります。企業側の要件全28項目は、以下のページで確認できます。

 

・厚生労働省 トライアル雇用助成金リーフレット(事業主向け)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000497220.pdf

 

トライアル雇用を利用するには、事前にハローワークに求人を出す必要がありますが、通常の求人とは異なります。求人票を出す際は、ハローワークに、希望する旨を必ず伝えるようにしましょう。

 

4.     まとめ

試験的に雇った労働者に対して一定額が支払われるトライアル雇用助成金は、人材確保が課題の企業にとって、利用価値の高い支援金です。制度の特徴や留意点などを把握し、メリットを感じられるようであれば、利用を検討すると良いでしょう。

一般トライアルコースは、受給要件など細かく決められていますので、申請の際は、それらを満たしているかどうか、事前に確認することが大切です。トライアル雇用助成金を活用し、人材不足解消に役立てていきましょう。

 

執筆者:佐藤 世莉(さとう せり)

英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。