本記事では起業時における社用車による節税効果や、その具体的運用方法を紹介します。「まだ社用車なんて早いよ」と考えている方も多いかもしれませんが、今回紹介するのは業務で自動車を使用することが多い方には、ぜひ知っておいていただきたい情報です。社用車による節税効果や社用車購入時の留意点、個人所有車の社用車への変更時の注意点などを解説していきます。
なお、はじめに書いておきますが「社用車はピカピカの外車じゃなければ・・・」というような思い込みは完全な誤りです(笑)。節税効果から考えれば、中古車の方が有利な場合もあります。そんな車選びのポイントも解説していきます。
1.車を維持するのに必要な経費
まず、車両維持に必要な一般的な経費をおさらいしてみましょう。主要な経費は以下の通りとなります。
- 車両購入費用
- ローン金利(ローン購入の場合)
- 自動車税(年1回)
- 重量税(車検ごと)
- 自賠責保険(概ね車検ごと)
- 自動車任意保険(契約内容により月払い、年払い等)
- 点検費用(法定点検年1回、法定費用+整備費)
- 車検費用(隔年、新車時のみ3年。法定費用+整備費)
- 駐車場代(賃借の場合、毎月)
- 燃料代(ガソリン、軽油)
- その他整備費、消耗品費用(タイヤなど)
あらためて列記してみると、多くの項目が必要となることがよく分かります。では、社用車にすることで、どのような節税効果があるのでしょうか。
2.社用車にすることによる節税効果
社用車を購入した場合は、以下の項目を取得価額に含めるものとして判断して、合計した金額をもとに法定耐用年数に応じて減価償却をおこないます。
- 車の本体費用
- 各種手続きにかかる諸費用
- 車にかかる各種税金
- 車両購入時に加入する保険料
- 分割購入にかかる利息
それでは車の購入費用からみていきましょう。
(1) 車の購入費用
社用車購入において、まず経費にできるのは自動車本体の購入費用です。附属品や購入手数料、運搬にかかる費用なども含まれます。より節税効果を高めるなら、高額な自動車を購入するという選択肢もありえます。会社の状況や目的に合わせて購入費用を検討する必要があります。
減価償却のスピードの違いを考慮するならば、新車よりも中古車、それも4年落ち以上の中古車が節税上では有利です。これは新車であれば、6年間かけて経費で落としていきます(普通自動車の場合)。これが先ほど書いた「法定耐用年数に応じて減価償却をおこなう」という意味です。つまり新車を買った場合、全額を経費で落とすのは6年後となるため、今すぐの節税にはあまり効果がないということになります。たとえば、1年で全額を経費として落としたいと考えた場合、どうすればよいのでしょうか。それが「4年落ち以上の中古車」購入という方法です。
そもそも、新車における「6年」という法定耐用年数は、「6年くらいは使えるだろう」ということから国が設定したものです。しかし中古車はある程度使っているはずなので、6年間も使えない可能性があります。そのため中古車には「耐用年数の特例」が認められています。この特例を使った場合に、一番節税に有利なのが「4年落ち以上」の車で、4年落ちの車なら1年で全額が経費になるという訳です。
(2) 諸経費
続いて、法人の必要経費に算入できる項目と、その仕訳・計上について解説します。
自動車税
⇒勘定科目は租税公課で計上
自賠責保険
⇒仕訳先は「保険料」もしくは「車両費」として計上
ガソリン代
⇒車両費や旅費交通費、消耗品費など用途に応じて仕訳・計上。ガソリン代の勘定科目をつくることも可
車検代や修理代
⇒車検代は内容に応じて点検整備は「修繕費」、自賠責保険は「保険料」もしくは「車両費」、重量税は「租税公課」として仕訳・計上。修理代は「修繕費」にて仕訳・計上
駐車場代
⇒地代家賃で仕訳・計上
車両備品
⇒消耗品費として仕訳・計上
3.社用車購入の留意点
社用車の購入における留意点をみていきます。
(1) 減価償却を考慮した購入のタイミング
社用車の減価償却は月単位であるため、その年度の途中で車を購入した場合は、年間の減価償却費のうち、その年度で使用した月数により按分します。節税は購入時期がその年度の始めに近いほど効果が高くなります。決算月の翌月が購入には最適であるといえます。
(2) 値崩れしない車を選ぶ
もう10年以上前、『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』という本が話題になりました。この本の骨子は中古車は新車より節税効果が高く、4ドアなら経費で落とせるという会計入門書でした(なお2ドアの車が経費で落とせないということはありません)。
将来売却を希望するときのポイントとしては、ともかく値崩れしない車を選ぶということです。「会計的には、実は中古のベンツよりも中古のレクサスのほうがいい場合がある」という見解もあります。
4.まとめ
最後に個人で所有している車を社用車に切り替える場合の注意点を説明します。このような場合は個人と法人の間で、「売買契約書」を作成することが必要です。税務調査で「名義が個人だから社用車として認めない」と言われる場合もあるからです。また「売買契約書」を作成する際は、個人で購入したときの金額ではなく、個人での取得後に減価償却をして、その償却後の金額を計上するようにしてください。
広告制作会社・書籍編集プロダクションなどを経て、現在はフリーの編集ライター。CSRレポートや環境報告書なども手がける。最近はDXをはじめとするIT関連分野のライターとしても活動中。