起業を志す人の多くが、資金調達を必要とします。潤沢な自己資金を持っている人でない限り、金融機関などからの融資を考えているのではないでしょうか。今回は、これから起業する人が利用できる資金調達方法について解説します。それぞれどのような違いや特徴があるのか、しっかり理解しましょう。
起業時に必要なお金
開業するまでに必要なおよその費用を把握できているでしょうか。開業準備を進めるうちに資金が足りなくならないよう、事前に細部まで算出しておくことが重要です。業種にもよりますが、開業に最低でも必要となる費用項目は以下の3つです。
引用:会社設立費用について
上記は設立のみに関わる費用です。他にも事務所の契約料や賃料、オフィスレイアウト、電話回線、インターネット、広告や名刺作成など、様々な費用が発生します。
起業時の資金調達方法
創業時は業務実績がないため、金融機関の融資審査は厳しくなりがちです。金利や条件、返済年数などを比較しながら、最適な融資を選択するようにしましょう。起業時に利用できる資金調達方法は主に以下の4つです。
- 融資
- 補助金・助成金
- 出資
- その他
融資
融資とは、金融機関が企業や個人に対して資金を貸し出すことです。ただし、起業や事業拡大、不動産取得など、明確な使途がある場合に限られます。融資の審査においては、収益が回収できるかどうかが要点となるため、事業計画をしっかりと練りあげて収益の裏付けをアピールことが必要です。金融機関によるの融資には以下の4つがあります。
- 日本政策金融公庫
- 信用金庫
- 信用保証協会
- 個人借り入れ
それぞれについて以下でご紹介します。
日本政策金融公庫
「日本政策金融公庫」は、国が100%出資している金融機関です。個人事業主や中小企業へ向け、100種類を超える融資制度が設けられています。対象となる事業は「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」に分けられ、一般貸し付けや新企業育成貸付など、業態や条件に応じた金利や返済期間が設定されています。
メリットは金利の低さと返済期間の長さですが、審査に時間がかかり提出書類が多いというデメリットもあります。
引用:日本政策金融公庫
信用金庫
「信用金庫」は、地域の資金を地域に還元することを目的とした非営利組織です。事業向け融資の種類には一般融資、制度融資、代理貸付の3種があります。これらの融資を受けるには、信用金庫の営業地域に居住、勤務、または事業を行うという条件があり、組合への加入も必要です。
最大のメリットは、事業を始めたばかりの小さな企業や個人であっても親身に相談にのってもらえることでしょう。取引先の紹介や各種情報提供が受けられることもあります。デメリットとしては、地域外の業務に対応できないことや、ATMの設置箇所が少ないなどが挙げられます。
引用:信用金庫と銀行・信用組合との違い
引用:信用金庫と銀行の違いって?メリット・デメリットは?
信用保証協会
「信用保証協会」は金融機関から融資を受ける際、保証人の代わりとなってくれる公的機関です。中小企業・小規模事業者、金融機関、信用保証協会の三者で成立しており、万が一返済が滞った場合は、借主に代わって立て替え(代位弁済)を行います。
これは「保証付融資」と呼ばれており、信用保証協会が付かない融資は「プロパー融資」と言います。保証付融資の場合、実績のない企業でも原則的に法人代表者以外の連帯保証人が不要であることが大きなメリットです。デメリットは融資を申し込む際に「企業規模」「業種」「区域・業歴」という3つの基準をクリアしなければならないことと、信用保証料の支払いが必要なことです。
引用:初めての融資と信用保証
個人借り入れ
日本政策金融公庫の統計によれば、創業時資金における親族からの借り入れは6%で平均73万円。友人その他からは6%で平均69万円とされています。個人間の金銭貸借は気軽な面もありますが、返済ができない場合、信用を落とし、人間関係に影響してしまう恐れがあります。また、援助を受けた場合は贈与税が発生します。
なお、消費者金融は即日審査・振り込みが可能というメリットはありますが、非常に金利が高いため完済できないケースが少なくありません。事業の継続のためには返済面も念頭に置いて融資を受けるのが賢明です。
引用:日本政策金融公庫
引用:借り入れ内訳
補助金・助成金
国や地方自治体の「補助金・助成金」は、どちらも返済の義務がない公共の支援ですが、助成金は一定の条件を満たせば支給されるのに対し、補助金は枠があるため受給できないことがあります。
引用:補助金/助成金を活用しよう。起業家が選べる4種類をご紹介!
- 国の補助金・助成金
- 自治体の補助金・助成金
数多くある補助金や助成金から、国と地方自治体ごとに、起業時に利用できるものを以下にピックアップしました。
国の補助金・助成金
国の補助金の一例として、経済産業省の「地域創造的起業補助金」があります。「補助金などに係る予算の執行の適正化に関する法律」の適用が条件となり、毎年春ごろ募集が告知されます。
また、厚生労働省の助成金には「特定求職者雇用開発助成金」があり、高齢者や障害者などを継続して雇用することが条件です。
国の補助金や助成金は、受給することによって会社の社会的信用度が向上するメリットがありますが、基本的に後払いなので、事業を遂行するための資金を確保しておかなくてはなりません。
引用:地域創造的企業補助金
引用:特定求職者雇用開発助成金
自治体の補助金・助成金
地方自治体の補助金では「小規模事業者持続化補助金」が有名です。日本商工会議所や全国商工会連合会が、すでに起業している小規模事業や個人事業主を支援するもので、事業計画書の提出が必須です。また、従業員の数にも条件があります。
自治体の助成金に関しては、各地域で独自の内容を設けており、それぞれ条件が異なります。事業を登録する地域の自治体のホームページをまめにチェックして情報収集をしましょう。
地方自治体の補助金や助成金は、地域密着型の企業にとって信用の証明となります。しかし、多くは事業の結果を出してからの後払いである点に注意が必要です。
引用:小規模事業者持続化補助金 商工会議所
出資
出資は企業または個人の投資家が、成長の見込みのある事業に資金を提供することです。返済の義務がなく金利もつかない代わりに、配当金や株を要求されます。また、投資家が経営へ関与することがあることも理解しておきましょう。出資元の中でも以下の2つに注目度が高まっています。
- ベンチャーキャピタル
- エンジェル投資家
ベンチャーキャピタル
「ベンチャーキャピタル」とは、複数の投資家が出資した資金の投資代行をする会社です。成長が予測される未上場の企業に投資し、上場後に株式や事業を売却して利益を出す手法が代表的です。
投資分を回収するため成長支援を行うので、起業したばかりの経営者にとっては大きな助けとなります。また、資金を得るまでのスピードが速いのも魅力です。デメリットとしては数字の管理がシビアで、成長の見込みがないと判断された場合は、資金の早期回収が行われることが挙げられます。
引用:エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違いを知っていますか?
引用:「ベンチャーキャピタル」とは?役割や基礎知識を解説
エンジェル投資家
「エンジェル投資家」とは、起業間もない会社に出資を行う個人投資家です。出資の対価として株式や転換社債を受け取ることが多く、ベンチャーキャピタルよりも小規模な出資が多いのが特徴です。会社ではないので、個人対個人の信頼関係が重要となり、経営や事業内容などにも投資家の意見が深く関わってきます。
投資家のアドバイスを肯定的に考えられる人にとってはメリットですが、経営に口を出されたくない人にとってはデメリットになることもあるので注意が必要です。
引用:エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違いを知っていますか?
その他
これまで解説してきた以外の代表的な出資方法としては以下のようなものが挙げられます。
- クラウドファンディング
- 資本性ローン
なお、出資を受けると資本金の金額が増えるため、税制上デメリットになることがあります。出資によって1000万円または1億円を超える場合は、消費税や法人住民税、税額控除などが変わるため、注意が必要です。
引用:資本金とは|資本金の額で税負担はどう変わる?
クラウドファンディング
「クラウドファンディング」は、インターネットを通じて不特定多数の人から資金の提供を受ける資金調達方法です。事業の趣旨に賛同してもらえるかが成功のカギになります。金銭リターンのある「投資型」や、リターンのない「非投資型」、利子を受け取る「融資型」、物品やサービスでお返しをする「購入型」などがあります。
パソコンさえあれば始められるのがメリットですが、計画性がないままスタートすると、頓挫したとき事態の収拾が困難になります。
引用:クラウドファンディングとは
資本性ローン
「資本性ローン」は「挑戦支援資本強化特例制度」とも言われる、日本政策金融公庫の融資制度です。使途が幅広く設定されているため、金融検査上では出資と同様、自己資本とみなされます。融資条件としては、地域経済の活性化にかかる事業を行うことや、税務申告を1期以上行っている場合は、原則として所得税などを完納していることが挙げられます。
起業した人や新事業を展開する企業が、無担保・無保証人で融資を受けられることがメリットです。デメリットは、収益がアップするほど金利が高くなることや、事業計画書など書類の提出が多いことです。
引用:挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
まとめ
今回は起業するときの代表的な資金調達方法をピックアップしてご紹介しました。この他にも多くの融資制度があります。さらに、新しい制度やシステムがどんどん出きていますので、どの融資方法が自社に合っているか検討してみましょう。