決算月の決め方/何を基準に決めればいいのか

起業する際に経営者の頭を悩ますもののひとつが決算月。決算月をいつにすればいいのか、何を基準に決めればいいのか悩むところです。ところで、日本の多くの企業は3月を決算月にしていますが、その理由は何でしょうか。決算月を決める際に考慮するポイント、決算月に最適な時期、決算月の変更の手続きや決算月変更によるデメリットなど、決算月について簡単にまとめてみました。

1. 一般的な決算月はいつ?

国税庁「統計年報(平成30年度版)」によると、我が国の法人274万7494社のうち、3月を決算月にしている法人は51万8394社で全体の18.9%を占めています。実に法人5社に1社弱が3月を決算月にしています。3月に次いで多いのが9月(29万5147社、10.7%)で、以下12月(28万5086社、10.4%)、6月(26万4985社、9.6%)、8月(23万8442社、8.7%)と続いています。一方、少ないのが11月(10万1393社、3.7%)と1月(10万1422社、3.7%)となっています。

多くの法人が3月を決算月にしている理由はシンプルです。国の会計年度に合わせ、国や自治体の行政機関や学校などが会計年度を4月から3月に設定しているからです。それゆえ、古くから多くの法人が決算月を3月に設定しているのです。また、法人税などの税法も、多くが基準日を4月から3月にしており、法人がそれに合わせて決算月を3月にしています。なお、国の会計年度が4月から3月までと規定されたのは1886年ですが、なぜ4月から3月までと規定されたかについては明らかになっていません。

2. 決算月を決めるポイント

決算月を決めるポイントですが、主に以下が挙げられます。

(1)  資金繰り

決算月を決めるポイントのひとつ目は資金繰りです。法人税や消費税などの税金は、決算月末日から2カ月以内に納付する必要があります。特に会社の資金繰りが高下する業種の場合、キャッシュが不足する時期と納税時期が重なると大変です。また、従業員にボーナスを支給する場合なども、ボーナスの支給時期と納税時期が重なってしまっても大変です。会社の資金繰りを年間で通じて眺め、キャッシュに余裕が生じる時期に合わせて決算月を決めるといいでしょう。

(2)  仕事の繁忙期

決算月を決めるポイントのふたつ目は仕事の繁忙期です。建設業などでは繁忙期と閑散期が明確に分かれるケースが多いですが、当然のことながら繁忙期を決算月にするのは問題です。特に事業規模が相応に大きな会社の場合、決算業務に必要十分なマンパワーが充てられるか注意する必要があります。また、顧問税理士などの外部のマンパワーが手当てできるかを考慮する必要もあります。会社の業務量と社内外の人的リソースとを十分に考慮し、ベストな時期を選定したいものです。

(3)  消費税の免税期間

法人が新たに設立され、課税期間の基準期間における課税売上高が1000万円以下の場合、消費税の納税義務が免除されます。基準期間とは前々事業年度のことで、事業を開始した日から2年度の間という意味です。つまり、事業開始年度が1カ月で終了した場合、消費税の免税を受けられる期間は1年1カ月となります。一方、事業開始年度が12カ月で終了した場合、消費税の免除が受けられる期間は2年間となります。消費税の免税が受けられる可能性がある場合は、免税期間を考慮して決算年度を決めるのも有効でしょう。

3. 決算月は変更できる

業務上の不都合やキャッシュフローの問題が生じた場合など、決算月を変更する必要が生じた際は決算月を変更できます。

(1)  決算月変更の手続き

決算月を変更するには、株主総会の特別決議による定款の変更が必要です。発行済み株式の過半数以上を持つ株主が出席して株主総会を開催し、三分の二以上の賛成により成立します。法務局への届け出などは特に必要ありませんが、所轄税務署や市区町村へ「異動届出書」を提出する必要があります。

(2)  決算月変更のデメリット

決算月の変更は、株主総会の特別決議が得られる限り、いつでも好きなだけ行うことができます。しかし、頻繁に行うべきではありません。決算月の変更には株主総会の招集業務などの事務作業が負担になりますし、決算月を頻繁に変更している会社は、何らかの決算操作をしているという疑いが持たれる場合もあります。また、取引先や金融機関から仕事が安定していないと見られる可能性もあります。決算月を変更する明確で妥当な理由がない限り、むやみに決算月を変更すべきではありません。

まとめ

以上、決算月についてまとめてみました。決算月を決める絶対的な決まりはありませんが、上述したように会社の資金繰り、仕事の繁忙期、消費税の免税期間などを総合的に鑑みて、ベストな決算月を選ぶとよいでしょう。避けたいのは、多くの会社が3月を決算月にしているからという理由だけで3月を決算月にしてしまったり、カレンダーに合わせて何となく12月を決算月にしてしまうことです。取引先や顧客との業務上の繋がりや、海外との仕事のやりとりがある場合などは特に、スマートに決算月を決めるべきでしょう。

(参照サイト)
国税庁「統計年報(平成30年度版)」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/h30/h30.pdf

執筆者:前田 健二(まえだ けんじ)

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスでビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年、経営コンサルタントとして独立。事業再生、新規事業立上げ、アメリカ市場開拓などを中心に指導を行っている。米国でベストセラーとなった名著『インバウンド マーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。